トップ > 教育に新聞を・NIE > トピックス > 「中日いきいき学習賞」決まる

ここから本文

トピックス

「中日いきいき学習賞」決まる(2019年2月14日)

 中日新聞社は、新聞を活用した教育(NIE)実践で成果を上げる教師6人に「第22回中日いきいき学習賞」を贈ります。また、同賞受賞後も実践を深めたとして、岡充彦さん(52)=名城大付属高校教頭=と、細江隆一さん(51)=岐阜県美濃加茂市西中学校教諭=に「特別奨励賞」を贈呈します。16日に名古屋市中区の名古屋銀行協会会館で表彰式を行います。

「中日いきいき学習賞」決まる

 伊藤鉄也さん(名古屋市富田高校教諭)進路に関する新聞記事を基に、高校で培うべき能力として考える、語彙(ごい)力・表現力および、進路意識の向上に努める。

 丹所成美さん(愛知県犬山市犬山北小学校教諭)子どもと世の中をつなぐ道具として新聞を活用。授業だけでなく学級経営などさまざまな場面でNIEを実践。

 吉田憲司さん(同県豊田市藤岡南中学校教諭)NIE実践を通し、社会的事象に関心を持ち、情報を取捨選択し多面的に考え意見発表できる主権者としての力を育む。

 櫛田尚人さん(岐阜県飛騨高山高校教諭)協力して問題を解決する力など、高校卒業後のキャリアで生徒に必要となる能力を培うべく、継続的にNIEに取り組む。

 浅野伸保さん(同県関市関商工高校教諭)災害、最新技術、インフラの老朽化問題など、土木を学ぶ生徒に社会情勢を理解し実践力を身に付けるべく新聞を活用。

 赤塚美鈴さん(三重県津高校教諭)家庭科の授業で、暮らしの中の課題を改善する「生きる力」を養うのに新聞を導入。プレゼンテーション力の養成にも努める。

(2月14日付 中日新聞朝刊33面より)

受賞したみなさんの活動(2019年2月21日)

 新聞を授業や課外活動に活用している先生を顕彰する「第22回中日いきいき学習賞」を6人が受賞し、2人が特別奨励賞に選ばれた。中部9県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野、滋賀、福井、富山、石川)の小中高校教師が対象。実践の継続性を重視した。受賞したみなさんの活動を紹介する。特別奨励賞は受賞者の感想を掲載。

スピーチで表現養う

伊藤鉄也さん(39)名古屋市富田高教諭

伊藤鉄也さん(39)名古屋市富田高教諭

 選択科目「国語教養」を担当し、1年を通して新聞を使った学びを実践する。語彙(ごい)を増やし、表現力を養うことが目的だ。

新聞を使った授業「国語教養」で、新聞の投書を読む生徒=名古屋市中川区の富田高で

新聞を使った授業「国語教養」で、新聞の投書を読む生徒=名古屋市中川区の富田高で

 一学期は新聞を使ったスピーチ。生徒が自身の進路に関する記事を選び、調べたことや考えたことをまとめて一人10分の持ち時間で発表する。二学期は、生徒一人一人が「新聞切り抜き作品コンクール」の作品作りに励む。三学期は、スピーチやコンクールを通して生徒がこれまでに調べてきた内容を、新聞に投書する形で文章にまとめ、多数決で残った作品を実際に新聞に投稿する。

 年度末に生徒にアンケートを取り、授業の前後で新聞を読む頻度が上がったかどうかなどを調べる。2017年度の結果では、「よく読む」と「たまに読む」を合わせた割合が、26%から49%に伸びた。「新聞を活用した授業を楽しいと感じたか」の質問でも9割以上が「楽しい」と答えた。

 生徒たちが、お互いのテーマに関する記事を見つけては交換する姿を「予想しなかった結果」と歓迎する。

 「話すこと、書くことはこれからの人生の大事な場面で必要になる。この先に生かしてほしい」(大沢悠)

視野広げ目標明確に

丹所成美さん(48)愛知県犬山市犬山北小教諭

丹所成美さん(48)愛知県犬山市犬山北小教諭

 新聞を通し、世界は大きく進路は多様だと児童が感じてくれるよう願う。「世の中の出来事は自分につながっていること。世の中にはたくさんの仕事があること。新聞でそれを知ることで、将来の目標を持って生きてほしい」との思いだ。

グループで犬山関連の切り抜き作品に取り組む児童=愛知県犬山市の犬山北小で(丹所教諭提供)

グループで犬山関連の切り抜き作品に取り組む児童=愛知県犬山市の犬山北小で(丹所教諭提供)

 新聞学習の取り組みは前任校から。原点に児童が「世間知らず過ぎる」という危機感があった。ニュースやそれぞれの将来を尋ねても反応が薄く、新聞を活用して視野を広げようと思い立った。5、6年生を担当し、引っ込み思案だった子が機械関連の記事に反応し、驚くほど豊かに感想をつづりだす姿に触れた。「新聞を介して潜在的な才能が表に出てきた。中学に送りだす際、自分の夢を堂々と言えるようになっていた」

 今の学校では3年生約90人と学習を試みる。当初、家庭で新聞に目を通していた子は少数。「大人が読むものと思っていたようですが、1年たち、ずいぶん読めるようになってきた」

 「わがまち犬山」の記事を探してグループで切り抜き作品も作った。「記事で何かに興味を持てば、根気よく読み、考える。それが自分の才能を見つけることにつながってくれれば」と期待する。(三田村泰和)

討論重ね主権者教育

吉田憲司さん(38)愛知県豊田市藤岡南中教諭

吉田憲司さん(38)愛知県豊田市藤岡南中教諭

 新聞を通して「いろいろな世の中の事象に触れてほしい」と、話題の記事を生徒に紹介している。前任校がNIE実践校に指定されたのを契機に取り組む。

生徒が新聞記事に対する意見を書き込んだ用紙=愛知県豊田市の藤岡南中で

生徒が新聞記事に対する意見を書き込んだ用紙=愛知県豊田市の藤岡南中で

 ニュースに触れてもらう目的は「主権者教育」。選挙権年齢が18歳に引き下げられ、主に受け持つ中学3年の教え子たちは3年後には投票に行く。「あまり世間のことを知らない子が多い。自分の立場になって考えてほしい」

 生徒に新聞を読むように勧め、週一回、朝のホームルーム前に気になった記事を発表する時間を設けた。発表する生徒は、記事の要点を説明し、質問を受ける。答えられないことはもう一度調べて、次回に説明する。

 自身が担当する社会科の授業では、関心が集まるニュースについての討論会も開いてきた。「みんな自分の考えをしっかり持つようになった」と手応えをつかむ。

 投票に行かない若者が多いのは「知らないから」。まずは世間に触れ、知ることから始まる。「日本の課題や各党のマニフェストを知って、多面的、多角的に投票先を選べる子になってほしい」と望む。(森本尚平)

切り抜き通じ主体性

櫛田尚人さん(36)岐阜県飛騨高山高教諭

櫛田尚人さん(36)岐阜県飛騨高山高教諭

 生徒の学習に新聞を取り入れて4年。授業前の10分間を利用して記事を読む「朝学習」や、テーマに沿った記事を模造紙にレイアウトする「新聞切り抜き作品」などに取り組んできた。

授業で新聞記事を切り抜く生徒ら=岐阜県高山市の飛騨高山高岡本キャンパスで

授業で新聞記事を切り抜く生徒ら=岐阜県高山市の飛騨高山高岡本キャンパスで

 朝学習では、担任クラスの生徒全員に週一回、新聞記事のコピーに内容を問う問題や感想欄を添えて配布。取り上げる記事は政治や経済はもちろん、スポーツなど軟らかい話題も用意している。切り抜き作品は、生徒の主体性を養う学習。国内政治や国際問題など生徒自身がテーマを考え、二カ月かけて関連記事を模造紙上に貼り付ける。

 NIEの活動を始めて、生徒の成長を一番実感したのは、大学受験の面接練習の時。「最近のニュースで印象に残ったものは」との問いに、生徒は詰まることなく生き生きと自分の考えを語った。細かい内容や興味を持った理由を尋ねても、明確な答えが返ってくる。「やってきて良かった」と思えた瞬間だった。

 社会で必要な能力は、相手の考えを理解し、自分の考えを伝えることだと思っている。生徒たちにはNIEを通して読解力や表現力を鍛え、卒業後のキャリアに生かしてもらいたいと願う。(横田浩熙)

技術者の卵 教養磨く

浅野伸保さん(37)岐阜県関市関商工高教諭

浅野伸保さん(37)岐阜県関市関商工高教諭

 なぜ災害が発生し、どんな対策が必要なのか。ドローンなどの新技術がどう生活に関わってくるのか。土木技術者を目指す生徒たちに、新聞を使って学ぶ意義を伝え、主体性や興味を引き出せるよう取り組む。

新聞切り抜き作品の制作に取り組む生徒たち=岐阜県関市の関商工高で

新聞切り抜き作品の制作に取り組む生徒たち=岐阜県関市の関商工高で

 授業では生徒に記事を読んで疑問点や気づきを考えてもらい、意見の発表やディスカッションの素材にすることもある。性急に答えを求めず、情報を共有して考えを深める。「議論するとコミュニケーション力も上がり、面接のトレーニングにもなっているのでは」

 学びのゴールの一つとして、3年前から「新聞切り抜き作品コンクール」に参加。生徒たちはまちづくりや技術革新など興味のあるテーマを選び、記事数十本を集めて制作に奮闘する。「こんなに新聞を読んだことはなかった」「次々と疑問が湧く」と真剣だ。「自分の考えをどう表現し伝えるか、プレゼン力やデザイン力も養える。先輩の作品を超えようと頑張ってくれています」と目を細める。

 生徒の多くは卒業後も土木業界に携わる。「事実を把握し、課題を見つめてほしい。最後は人間力。現場の即戦力になれるよう幅広い教養を身に付けてくれたら」と望む。(本間貴子)

暮らしの新情報探す

赤塚美鈴さん(57)三重県津高教諭

赤塚美鈴さん(57)三重県津高教諭

 教科書を読むだけの授業では生徒は下を向くばかり。「世の中で今起きている新しい話題であれば、真剣に受け止め、知りたいと思ってもらえる」。そんな思いから高校の家庭科の授業で19年間、「新聞を活用したプレゼンテーション」に取り組んできた。

新聞記事を活用し、プレゼンテーションの準備を進める生徒たち=津市の津高で(赤塚教諭提供)

新聞記事を活用し、プレゼンテーションの準備を進める生徒たち=津市の津高で(赤塚教諭提供)

 家庭生活は食や子ども、福祉など幅広く、新聞と密接に結び付いている。グループで家庭生活に関する記事を選び、そこから教科書や資料集などを使って内容を掘り下げていく。生徒たちが選ぶテーマは、食料自給率やヤングケアラー、イヤイヤ期など多岐にわたる。話し合いながら理解を深め、最終的にA4用紙5枚にまとめて発表する。

 実践校に指定された2017年度からは、校内に新聞7紙を読めるコーナーを設置した。教科書と違い、暮らしの新しい情報を得られるのは新聞だからこそ。「生徒たちが新聞を読み比べたり、テーマに沿った記事を自主的に探したりするようになった」と振り返る。

 プレゼンに取り組むのは、考えをまとめて人に伝え、共有し合うことで学びが深まると考えるから。「努力が認められた安心感と喜びでいっぱい」と受賞を受け止めた。(斉藤和音)

特別奨励賞

順序立てた指導 模索

岡充彦さん(52)名城大付高教頭

岡充彦さん(52)名城大付高教頭

 私は2006年度に「中日いきいき学習賞」を受賞した後、さまざまな教科で散発的に行ってきたNIEの授業を、ひとつの教科で系統的にできないかと模索してきました。生徒からは「新聞学習を通じて社会に興味を持った」、教員からは「普通の授業とは違った生徒の姿を見ることができた」という感想がありました。

 それでも、強い危機感を抱いています。新聞を読む生徒は増えず、アンケートをとると高校生から遠い存在だと痛感します。新聞の発展なくしては、NIEも尻すぼみになります。今の時代に合った読みたくなる新聞とは何なのか。それを考え新聞社に発信していく授業があってもおもしろいと思います。

情報選ぶ力 育てたい

細江隆一さん(51)岐阜県美濃加茂市西中教諭

細江隆一さん(51)岐阜県美濃加茂市西中教諭

 新聞は子どもたちに自信を与えてくれます。国語の授業で学んだ説明文を手本に書いた作文や、震災など大きなニュースの感想文を新聞に投稿する。掲載されれば家族も喜んでくれ、それをきっかけに国語が好きになる子も結構います。

 新聞切り抜き作品コンクールや「いっしょに読もう!新聞コンクール」にも毎年参加しています。子どもが友達や家族、塾の先生らいろんな人の意見を聞く機会となり、自主的に各新聞の記事を読み比べる子も出てきました。

 誤った情報に流されないように、新聞を通して自ら情報を選択し、活用する力を育てたい。保護者と一緒に切り抜き作品を作る機会も設け、新聞の良さを広めていきたいです。

(2月21日付 中日新聞朝刊28面より)

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索