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福井発

宗教の道場を網羅へ 有志調査「全国に伝えたい」

失われつつある県内独自文化

「道場さんを訪ねて」を手にする佐々木さん(左)と酒井さん=福井市の最勝寺で

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上吉野道場を調査する有志たち=永平寺町松岡上吉野で

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 浄土真宗の門徒が教えを聞き、宗教行事を行う「道場」。嶺北を中心に各地に建てられ、独自の宗教文化を育んできた。しかし、道場の総数など詳しいことは分かっておらず、県内に住む住職ら有志が道場の調査を進めている。後継者問題などで失われつつある道場が担った宗教文化を広く知り、学んでもらう狙いもある。住職らは「十年後にはなくなってしまう。情報を寄せてほしい」と呼び掛けている。 (藤共生)

 福井市脇三ケ町の最勝寺(浄土真宗本願寺派)住職の佐々木教幸(きょうこう)さん(68)と、永平寺町議の酒井和美さん(43)=同町東古市=らが調べている。佐々木さんはかつて仲間の僧侶と道場を調査し、二〇一六年に「道場さんを訪ねて」を出版。九年間かけて百三十カ所を調べ、そのうち百八カ所を紹介した。

 この本を読んだ酒井さんは、祖父が道場主を務めていた深谷道場(勝山市野向町深谷)が載っていないことに気付く。佐々木さんらの調査ではすべてを網羅できたわけではなく、意気投合した二人はさらなる調査に乗り出すことにした。県内の建築士らで歴史的建造物の調査保存を行う「ふくいヘリテージ協議会」に合流を依頼し、これまで調査を進めてきた。

 道場は主に室町中期ごろから広まり、長く地域の信仰や文化の拠点となってきた。ところが、道場の管理を任される道場主は現在、ほとんどが八十代。後継者が不在の道場も多く、建物の老朽化も進んでいる。

 今井道場(勝山市猪野口)を管理する今井倫子(のりこ)さん(81)は「道場の世話は女性の仕事。体力的に年々しんどくなる。息子夫婦に継がないかと打診はしているが…。主人とどうしようかと話している状態。先祖がずっとやってきたことだし、続けたい気持ちはある」と話す。

 酒井さんは「道場がなくなると、福井の人の良さが一気に失われてしまうのでは」と危惧する。野菜を分け合うなどの人の優しさの背景には、道場が担う仏教文化があるのではないかと指摘。佐々木さんは「われわれの先祖がつくった文化の深さを現代人にもっと学んでほしい。全国に道場という宗教文化を伝えたい」と意気込んでいる。

 現在、「道場さんを訪ねて」に掲載されていない、新たな道場の情報を求めている。連絡先はメール(アドレスはsacaick@gmail.com)か、最勝寺の佐々木さん=電090(1635)1790=へ。

【道場】門信徒が集まり、仏法を聴聞する場。武道の稽古場とは異なる。集会所としての機能もあり、地域の仏教徒が管理してきた。主に蓮如上人の布教以降に広まったとされるが、成立の歴史は不祥。各宗派でも総数は把握していない。県立歴史博物館の河村健史学芸員によると、他県では明治時代に道場の多くが寺院化。多数が道場のまま残る福井は珍しい。「(建物や仏像が対象の)文化財調査のまな板に載ってこなかったため、研究は立ち遅れている」と指摘する。

 

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