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企画・制作/中日新聞広告局

シンポジウム「昇龍道の新たなる挑戦〜欧・米・豪からの誘客強化に向けて〜」

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 中部9県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野、石川、福井、富山、滋賀)の訪日外国人誘客施策の今後を展望するシンポジウム「昇龍道の新たなる挑戦〜欧・米・豪からの誘客強化に向けて〜」が2月25日、ウィルあいち(名古屋市東区)で開催された。一般市民や観光事業者ら450名が参加。冒頭、中部運輸局・石澤龍彦局長が官民一体となった「昇龍道プロジェクト」のアジア圏での成果を紹介した上で、「今後は欧米豪の個人旅行客へのアプローチ強化にも取り組んでいく」という方針を示した。その後の識者による基調講演やパネルディスカッションではターゲットを拡大する上での新たな施策や課題を考え、次の戦略を探った。

プレゼンテーション「SHORYUDO NEXT STAGE」

個々のニーズを捉え需要を喚起

中部運輸局長 石澤龍彦氏

中部運輸局長 石澤龍彦氏
三重県出身。1986年運輸省(現国土交通省)入省。2006年関東運輸局・企画観光部長。その後に海事局、総合政策局、内閣官房、関東運輸局などで要職を歴任し2017年7月より現職。

 2012年3月に始まった「昇龍道プロジェクト」は、今年で8年目を迎えます。当初のメインターゲットは東アジアや東南アジアからの旅行客で、エリアを訪れる外国人延べ宿泊者数の77%を占める迄になりました。今後は11%にとどまる欧米豪からの旅行客をいかに伸ばすかが課題で、その市場開拓のためのさまざまな施策が必要です。

 まず現状では、金沢市で宅配事業者が観光案内を兼ねた店舗を開設したり、高山市で観光案内所に免税カウンターを設けたりと、全国的に珍しい受入環境整備が行われていますが、こういった複合的な施設がエリア内でさらに整備されることが求められています。また、外国人旅行客が好む体験型エコツーリズムや夜の観光、クチコミ評価が高い産業観光でモノづくりを訴求するなど、視野を広げて取り組みを充実させていくことが今後の誘客促進へとつながるでしょう。

 欧米豪市場へ働きかけるプロモーションを今年度から強化し、各国のメディアや旅行会社、インフルエンサーを招請して名古屋近郊を中心に体験型観光をしていただきました。こういった顧客体験をSNS等で発信した他、ターゲットの傾向や嗜好を調査し次のプロモーションを展開。さらにターゲットに合った旅行商品やプログラムを企画することで体験が広く共有される“デジタルマーケティング”が誘客促進に力を発揮すると思われます。また、Wi−Fi環境整備や、ICT等を活用した多言語対応等による街歩き満足度向上、目的地への経路検索から予約・決済までスマホアプリでシームレスにできる「観光型MaaS(Mobility as a Service)」実証への取り組みなど、これらのサービス実現でさらなる利便性向上が期待されています。

 地域の潜在的な観光資源発掘と商品化など、取り組むべき課題は数多くありますが、そのためには舵取り役となる観光協会等の法人(DMO)のより活発な活動が不可欠です。国としても世界水準のDMO形成を促す事業に予算を配分し、専門人材登用に力を入れ始めています。昇龍道エリアでもDMOの積極的な取り組みが加速され、欧米豪を中心とする誘客に勢いが増すことでしょう。

基調講演「インバウンドの最新動向と今後 〜広域連携による成功のカギ〜」

成功事例をエリアで共有

やまとごころ 代表取締役 村山慶輔氏

やまとごころ 代表取締役 村山慶輔氏
神戸市出身。米国ウィスコンシン大学マディソン校を卒業後、アクセンチュアに入社し、地域活性化プロジェクトなどに従事。退社後、2007年にインバウンド観光に特化したBtoBサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、企業・自治体向けに情報発信、教育・研修、コンサルティングサービスなどを提供する。インバウンドビジネスの専門家として国内外各種メディアへ出演多数。

 インバウンド(訪日外国人旅行者)が2018年、初めて3000万人を突破しました。政府は今後の目標として、2020年に4000万人、2030年に6000万人と設定し、プロモーションや受入環境整備に力を入れていく動きを見せています。私は、この目標数値が達成できる可能性は十分にあると思います。

 世界観光機関のデータによると、今、世界中の人が海外旅行に目を向け、数が増える傾向は顕著となっています。2020年には13.6億人、2030年には18.1億人が海外旅行に出掛けるとの予測もあります。昇龍道プロジェクトが新たなターゲットの一つに挙げるヨーロッパの人たちの数が一番多く、また伸び率では、アジア・太平洋地域の人たちが最も高い伸びを示しています。このようなデータが示す傾向は、政府が掲げる今後の目標達成に追い風となるはずです。さらに日本では今年、ラグビーワールドカップが開催されるほか、来年は東京オリンピック・パラリンピック、再来年は関西ワールドマスターズゲームズと、いわゆる「ゴールデン・スポーツイヤーズ」が到来。インバウンド増加を加速していくことは間違いありません。

 この絶好の機会を活かすために、最近のインバウンドが示す変化を理解しておく必要があります。一つ目は「団体観光から個人旅行へのシフト」です。観光バスに乗って団体で回る旅行スタイルが減り、個人や家族での旅行が増加。ヨーロッパの人を中心に、旅行中も夫婦だけの時間を大切にする傾向があり、食事や買い物、宿泊といった場面で子どもにどう対応し、夫婦にフリーの時間を与えられるか、工夫が求められることも今後増えてくるでしょう。そして二つ目は「都市部から地方へ」の変化です。実は訪日客のリピーター率は6割に上ります。リピーターであればあるほど、行ったことのない場所に行きたくなるものです。国が示すデータでも、三大都市圏に比べ、地方を訪れる人の伸び率が高くなっています。

 三つ目は「欧州勢の存在感の高まり」です。地理的に欧州勢は長期滞在者が多く、消費額も宿泊・飲食・交通費等、それぞれバランスよく高くなっています。ラグビーワールドカップで欧米豪から多くのファンが訪れると思いますが、各試合の間にどう観光し消費してもらうか。例えばSNSを活用した広告で誘客を図るなど、効果的な対策でオリンピック・パラリンピックへと続く良い契機としなければなりません。また、世界の人口の約1割といわれるベジタリアン(菜食主義者)への対応や、温泉等でタトゥーにどれだけ寛容でいられるかも問われるところです。最後に四つ目ですが「モノからコトへ」の変化です。「次回の訪日でやりたいこと」という調査に、四季の体感、温泉入浴、自然体験ツアーといった回答が並び、体験型観光に興味が移っているのがよく分かります。観光資源というコンテンツに価値を付け、いかに商品とするかがポイントとなります。青森県の弘前城ではインバウンド向けの「手ぶらで観桜会」という商品が人気だそうです。食事とお酒、演奏などのエンターテインメントをパッケージ化したことで、お花見に付加価値を生み出しました。

 昇龍道プロジェクトもそうですが、こういった変化に対応するには広域連携がとても重要となってきます。地理上の都合で連携したとしても、その上で何を目的として連携しているのか、プロジェクトに携わる全員がその意識を共有していなければなりません。共同マーケティングやプロモーション、点ではなく面で取り組むことで顧客満足度が担保されることなど、広域だからできることはたくさんあります。そして誘客の取り組みを加速していくために、エリア内で小さな成功事例を創出して共有し、可視化することが大切です。エリア内の事業者同士はライバルでもあり、その等身大の成功事例が一番参考となるはず。「こちらでもできる」と勇気をもらい、エリア全体で取り組みを加速する原動力となるのです。

 今、世界は国際的な観光客争奪戦の真っただ中にあります。知的好奇心が強く、本物志向の欧米豪の皆さんに昇龍道エリアの良さ、そして他との違いをしっかり発信していくことが重要。そのための「連携」と「共創」が成功のカギとなるのです。

パネルディスカッションテーマ「欧米豪からの誘客強化に向けて」

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◇パネリスト
ドラ・トーザン氏(国際ジャーナリスト/日仏友好大使)
山本尚樹氏(NTT西日本 取締役 東海事業本部長)
鈴木ちなみ氏(タレント/岐阜県飛騨・美濃観光大使)
村山慶輔氏(やまとごころ 代表取締役)

◇コーディネーター
小出宣昭(中日新聞社顧問・主筆)
 

ターゲットが望む価値に応える戦略を

丁寧で一生懸命な応対が良いホスピタリティーに

国際ジャーナリスト/日仏友好大使 Dora Tauzin ドラ・トーザン氏

国際ジャーナリスト/日仏友好大使
Dora Tauzin
ドラ・トーザン氏
ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連本部広報部に勤務後、NHKテレビ『フランス語会話』に出演。日仏の架け橋として、新聞・雑誌への執筆、コメンテーター、講演会など活躍中。2015年、レジオン・ドヌール勲章を受章。

小出欧米豪の人の心を打つ観光とは、どのようなものが考えられるかお聞かせください。

ドラよく「日本のどこが一番好き?」と聞かれますが、迷わず「日本人の心」と答えます。温かさ、優しさ、親切心。日本に初めて来たのは25年も前のことですが、日本人の心に触れ、すぐ好きになりました。旅の楽しさは、その土地に住む人との交流ではぐくまれる部分がかなりあります。私のように欧米豪から多くの人が訪れ、日本人と交流してもらえればと思いますが、一つ気掛かりなのが日本人の英語力です。以前、フランス人にアンケートを取った際、「日本へ行けば、誰でも英語が話せると思っていた」との回答も多くありました。おもてなしは世界トップレベルといえますが、英語力の部分で若干の不自由さが残るかもしれません。

鈴木私は仕事で30カ国以上を旅した経験がありますが、日本人はかゆいところに手が届く国民性だと思っています。世界で日本と似ていると感じたのはドイツとペルー。アメリカは良い意味で自己主張する文化があり、日本は奥ゆかしさ、行間を読む文化があります。英語が多少話せなくても、相手が何を必要としているか、何に困っているかを敏感に察知できる。そんな日本人に潜在的に備わっている力を最大限に活かせば、英語力不足をカバーして外国人を普通に受け入れられるのではと思います。

やまとごころ 代表取締役 村山慶輔氏

やまとごころ 代表取締役 村山慶輔氏

山本私も海外に出掛けて英語で話すとき、一生懸命聞いてくれるところと、そうでないところがある。そんな違いでその国に持つ印象は変わってくるものです。一生懸命聞いてくれれば、また足を運ぼうと思います。欧米豪の方たちが日本に来たときも同じことがいえるのではないでしょうか。私たちのつたない英語でも一生懸命コミュニケーションを取ろうとすれば気持ちは伝わり、とても良いホスピタリティーと感じてもらえるかもしれません。私はICTの力で観光における課題解決をご提案する仕事に携わっていますが、Wi−Fi環境等を整備することで得られるデータから国別で各観光客の行動や嗜好の傾向が読み取れます。昇龍道エリアでは欧米豪の方たちが飛騨高山付近を多く訪れているデータに着目しています。古い町並みといった魅力のほかに、多言語表記の案内がしっかり整備されているからと推測できますが、それ以外にも地元の人たちがコミュニケーションに苦労しながらも丁寧に応対している。そんな一生懸命さが良いホスピタリティーとして人を集め、リピーターを生み出す要因になっているのではないでしょうか。ただし、昇龍道でのこうしたデータの活用について、各自治体や企業別では取り組んでいますが、全体像をつかむ努力がさらに必要だと思います。既に北海道や関西ではデータで人の流れを把握し、効果的な誘客戦略で実績を出した事例もあります。

国の違いを意識して多言語で情報発信を

NTT西日本 取締役 東海事業本部長 山本尚樹氏

NTT西日本
取締役 東海事業本部長
山本尚樹氏
87年日本電信電話株式会社入社。NTT西日本兵庫支店営業企画部長、サービスクリエーション部長、ビジネスデザイン部長、マーケティング部長などを経て、2016年6月より現職。

小出日本でそれぞれの楽しみ方を考えている欧米豪の方たちへ配慮すべき点や、効果的な情報発信手法とは何でしょうか。

ドラまずインバウンドとしてやって来る欧米豪の方たちの目的を考えてみましょう。ほとんどの方が最低2週間をかけ、ヴァカンスとしてやって来るはずです。ヴァカンスでは日常を忘れ、ゆっくり時間を過ごすことが大切。毎日のスケジュールがきっちり決まっている旅行はこの趣旨に合いません。個人的嗜好や自由に動ける時間を大切にすることでサプライズが生まれ、発見につながる。「ここは面白いからもうしばらく滞在しよう」といったことはよくあり、もてなす側にもフレキシビリティー(柔軟性)が求められます。また、フランス人は家族全員で過ごす時間と同時に、夫婦2人の時間も大切にします。旅館の部屋割りなどにも配慮が必要だと思います。

山本旅行先で自由に動ける時間で生まれるサプライズは、共有したい一つの情報となります。多くの方がSNSを使って、その場所や見聞きした内容を発信するので、そこで発信したくなる様な興味あるものをいかに用意するか。その仕掛けづくりは必要となってくるでしょう。そのSNSを見ていない人にも、例えば電子掲示板のようなツールで広く掲示して情報共有することも可能です。

村山キーワードとして「スペシャルインタレストツアー」という考え方が挙げられます。ラグビーやゴルフといったスポーツ、その他趣味や興味を持ちそうな分野でテーマを設けて集客し、観光ルートに組み込む。テーマでインバウンド同士のつながりを持たせる考え方は、誘客促進の上で今後重要になってくると思います。

ドラ欧米豪とひとくくりで国を考えないことも大切です。まずヨーロッパとアメリカでは考え方や風習は異なり、ヨーロッパ各国も共通点はあっても国民性は多様です。例えばヨーロッパの人たちは神道や仏教といった日本固有のスピリチュアルな世界観が大好き。また、フランスでは俳句が人気で、松尾芭蕉の本が多数出版されています。こういった国の違いを踏まえて情報発信すべきだと思います。

鈴木私は岐阜県飛騨・美濃観光大使を務めさせていただいていますが、岐阜県は広く、知らなかった特産物やおいしいものに出合うことが今でもよくあります。こういったものを発掘して、SNSでハッシュタグを付けて発信すると面白い。そのとき日本語や英語だけでなく、例えば中東など10カ国ぐらいの言葉のハッシュタグで発信すると、インバウンドの皆さんに広がり浸透していくのではないでしょうか。

素晴らしいコンテンツを貪欲かつ大胆に訴求

タレント/岐阜県飛騨・美濃観光大使 鈴木ちなみ氏

タレント/
岐阜県飛騨・美濃観光大使
鈴木ちなみ氏
岐阜県多治見市出身。2008年モデルとしてデビュー。メーテレ「デルサタ」・東海テレビ「スタイルプラス」のレギュラー番組を通じて地元の活性化に貢献。その他、数々の番組・CMと幅広く活躍中。

小出それぞれの立場からの視点で、昇龍道の今後進むべき道筋をどのように描きますか。

山本3年前に大阪から名古屋にやって来て、私も昇龍道を巡って観光しましたが、来る前のイメージとは全く違いました。もちろん「こんなにいいところだったんだ」という印象です。海・山・温泉と重要なコンテンツがすべて揃っている。個人的には、うなぎのおいしい店がどの県にもたくさんあることがうれしかったです。いろいろなものがそろっているからこそ、まだ知らないモノやコトもたくさんあるはず。まず、住んでいる私たちがもっと知る努力を重ねないと、欧米豪の皆さんにPRしようがありません。まずは謙虚に取り組むべきところがあると認識するところから始めましょう。私たちはICTの力でこれらを可視化して気づきにつなげ、有効な策が打てるようお手伝いしていきたいと思います。

鈴木地元の人にとっては当たり前と思っていることでも、外国人から見たら新鮮に感じることがたくさんあります。私たち一人一人が広告塔になって発信していく姿勢が大切ですね。よくあるルートとして、セントレアに到着後、名古屋を少し観光。その後そのまま高山に向かうという方が多いように思います。しかしその途中に温泉も、おいしい食べ物もたくさんあります。そういったお勧めスポットをよく使われるルート上に設定し、ニーズに合わせた周遊ルートのバリエーションを増やせば、もっと多くの人に楽しんでもらえるのではないでしょうか。中国で、日本は空気がきれいだから「肺をきれいにする旅」という企画を打ち出したと聞きます。それくらいの貪欲さ、思い切った切り口でPRしていくことも必要かもしれません。

コーディネーター 小出宣昭(中日新聞社顧問・主筆)

コーディネーター
小出宣昭(中日新聞社顧問・主筆)

ドラ素晴らしいコンテンツが多いからこそ、来日者数に直接響くプロモーションの手法がとても重要になってきます。今日は外国人の立場で様々な意見を出させていただきましたが、今後プロモーションで必要となるウェブサイトやパンフレットの制作には外国人も加わったほうがいいと思います。昇龍道を魅力的だと感じるポイントは、日本人と外国人では違う部分もあるからです。できるだけ多くの国の人々の目線に立ってプロモーションしていければと思います。

村山私は、戦略とは「何をしないか決めること」だと思っています。何を捨てるか。「全部ある」と訴求すると、何も印象に残らない危険性をはらんでいます。例えば、立山黒部アルペンルートだと「雪の壁」の写真を見せるだけで、東南アジアの方たちの心をつかみます。こういった分かりやすさはとても重要なのです。また、温泉やスキーなど、テーマによっては昇龍道を飛び出し、他のエリアとタイアップを図るという縦横無尽に動く大胆さもときには必要です。すべては、欧米豪からのインバウンドというターゲットが何を望み、何を価値と考えるか。その根拠となるデータ収集が今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。

小出欧米豪の皆さんは滞在日数が長いという共通点はあっても、期待するコンテンツは人それぞれ。昇龍道の素晴らしいコンテンツが一人一人の満足につながるよう、きめ細かなプロモーションが必要だと感じました。今日は貴重なご意見をありがとうございました。

主催

中日新聞社

後援

中部運輸局 北陸信越運輸局 中部経済連合会 北陸経済連合会 中央日本総合観光機構 日本観光振興協会中部支部

提供:協賛各社

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