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静岡ニュース

TPP 賛否くっきり

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 米国やオーストラリアなど十一カ国が貿易や投資の自由化を目指す環太平洋連携協定(TPP)。衆院選の県内小選挙区の候補者三十五人に本紙が行ったアンケートでは、十一人が「賛成の方向」、二十一人が「反対の方向」、三人が明確な態度を示さなかった。

 浜松市北区三ケ日町のミカン農家清水理(おさむ)さん(72)は「オレンジ自由化などの単一産物の問題と違い、TPPは農業全体に影響がある」と交渉参加に反対の立場だ。

 品質と安全性では日本の農産物はどこにも負けないという自負はある。だが、デフレ下では「消費者は外国の安い農産物になびくのではないか」と危ぶむ。「海外へ流通の道が開けることは期待するが、日本の農産物を国内で消費する構造をつくることが先決。国益に反するものは交渉で拒否するというが、具体的な議論が見えない」と不安が強い。

 静岡市葵区のコンサルティング会社社長蟹江達由さん(48)は「参加してみなければ分からないこともある」と、まずは交渉のテーブルにはつくべきだとの考え。メリットやデメリットが分かったときは融通の利く対応が必要との立場だ。

 TPPは関税を原則撤廃し、投資分野などで大幅に規制緩和することから「貿易が円滑になって経済が活性化する」と期待。一次産業への影響については「農業を守る対策は必要。国としてセーフティーネットの整備を」と提案する。

 浜松市南区の主婦川上洋子さん(59)も「競争力が高まって、長い目で見て日本の成長につながると思う」と賛成の立場。「日本は優れた物を作る技術がある。消費者が海外の安価な商品に流れても、国内企業には対抗する力があると思う」と将来的にはプラスになるとみている。

◆自由貿易 枠組み妥当か

浜松大ビジネスデザイン学部 秋永利明准教授

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 TPPを考える上で重要なのは、TPP参加の是非と、自由貿易を推進するか否かというのは別問題だということだ。「自由貿易は推進するがTPPには反対」と回答した候補者もいる。資源が少ない日本の経済は貿易なくして成り立たない。その枠組みとしてTPPがふさわしいかどうかという視点が必要だ。

 経済学者として自由貿易は不可避と言えるが、TPPで良いのかの判断は難しい。だが、東南アジア諸国連合(ASEAN)は自由貿易圏としてはまだ頼りなく、中国や韓国との自由貿易協定(FTA)では日本が主導権を握れるか不透明だ。一方、世界最大の経済大国であるアメリカが入るTPPは魅力だ。

 農業への影響を危惧する声が多いが、むしろプラスに捉えるべきだ。日本の高品質な農産物は国際的なブランドになり得る。輸出に向けた取り組みを支援し、「守る農業」から「攻める農業」へ発想の転換が必要だ。もちろん打撃を受ける農家への補償も欠かせない。

 有権者は「TPPに賛成か、反対か」だけで判断すべきではない。反対ならどのような貿易の枠組みを考えているのか。賛成ならTPPの中でどう日本の国益を守るつもりか。そこまで見極めて一票を投じてほしい。

(理論経済学)