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長野ニュース

<選択の時>(5) 再生可能エネルギー

園舎の屋根に取り付けられたソーラーパネル=飯田市の鼎みつば保育園で

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 電力をはじめとするエネルギーは、産業と暮らしを支えるために欠かせない存在だ。しかし、ひとたび事故を起こせば制御不能に陥り、国土すら失いかねない原発へ依存する危うさを、多くの人が東京電力福島第一原発の事故で思い知ることになった。衆院選でもエネルギー政策は重要な争点となる。県内では、豊かな自然環境を活用しようと、再生可能エネルギーを普及させる試みが始まっている。

 飯田市の「鼎(かなえ)みつば保育園」は二〇〇五年に、屋根へ太陽光発電パネルを設置した。一日平均の発電量は三十キロワット時。日照条件が良い時は、園内の電気すべてを自足できるという。

 保育園の初期投資はゼロだ。市内の民間企業「おひさま進歩エネルギー」が提供するファンドを利用し、設置に賛同する市民や地元企業が出資する。余った電気は中部電力へ売り、得た収入を出資者への配当に充てている。

 ファンド方式は、同社の原亮弘社長(63)が「再生可能エネルギーに注目を集めよう」と〇五年に全国で初めて事業化した。

 当初は認知度が低く、営業先で相手にされないことも多かったが、東日本大震災以降に風向きが変わった。月に一、二回程度だった環境団体の視察は三倍に増加。新たな出資を募ると、あっという間に資金が集まった。

 飯田下伊那地域には現在、このような事業を利用して太陽光発電パネルを設置した施設が約二百二十カ所ある。原社長は「もっと多くの人に参入してほしい」と訴える。

 小規模な水路を利用する小水力発電も、水資源に恵まれた信州では高い可能性を秘めている。

 研究に取り組む信州大の池田敏彦名誉教授(66)は「県内の水力発電の潜在力は、県内世帯が使う電力の二倍以上という国の調査結果もある」と意気軒高だ。

 既に県内を中心に十三カ所で実用化したが、普及には行政によるさまざまな規制が壁だ。河川の利用には、国や都道府県などの許可が必要で、目的や使用水量、工事計画など多岐にわたる書類を提出しなければならない。水利権を所有者の同意も必要で、計画から発電開始まで数年はかかることもざらだ。池田氏は「法的な面で緩和が必要」と訴える。

 再生可能エネルギーが注目を集めるのは、発電した全量を一定期間、固定価格で電力会社が買い取る「固定価格買い取り制度」が今年七月に導入されたことが大きい。

 買い取り価格案をまとめた国の有識者会議で委員長を務めた植田和弘・京大院教授は「再生可能エネルギーによる発電は、まだ全体の1%。早急な普及には高めの価格が必要だ」と説明する。

 ただ、買い取り費用を電気料金へ上乗せされ、最終的には利用者が負担するため、企業の費用や家計を圧迫する恐れもある。価格は定期的に見直すため、買い取り価格が下がれば再生可能エネルギーへの期待はしぼむ可能性もある。

 再生可能エネルギー先進国のスペインでは、経済危機のため今年一月、新規買い取りを凍結した。バラ色の未来ばかりとは言い切れず、普及の可否は今後の政策と技術革新がカギとなる。

 原社長は「再生可能エネルギーのあり方の転換点になる」と、今回の衆院選を見守っている。

 =終わり