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長野ニュース

<選択の時>(4) 防災

県北部を襲った震度6強の地震で大きな被害が出た栄村(2011年3月12日撮影)

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 東日本大震災の翌日、栄村を襲った震度6強の県北部地震。住居を失った人のための村営住宅が、国の支援を受けて十一月に相次いで完成した。財政基盤が弱い地方は、復興に国の支えがどうしても必要だ。頻繁に自然災害に見舞われている県内は、広い地域でなお危険性が指摘される。防災や減災は古くて新しい課題と言える。

 真新しい村営住宅に、家具や家電製品が次々と運ばれていく。独り暮らしの桜沢名代子さん(77)も、一年半過ごした村内の仮設住宅を後にして入居した。「地震の後は皆さんのおかげでやって来られた」と、家具や日用品の整理に追われた。

 村営住宅の建設費は、三十一戸で六億八千九百万円。大半を国の交付金でまかなう。いったん大規模な災害が起きれば、自治体単独の対応には限界がある。前年度に国は村の災害復興に十四億円を費やした。震災前の村の一般会計予算は二十数億円なので、大きな投資だ。

 「どこにも行かないで、住み慣れた村で暮らしたい」。そう話す桜沢さんの願いに応えるには、国の支援は欠かせない。

 発生が想定される災害に、どう備えるかも問われている。

 「地区全体が埋まってもおかしくない」。飯田市南信濃地区で燃油店を営む五十代男性は、十月に国土交通省が発表した「深層崩壊」の発生危険地点を見て、危機感を覚えた。深層崩壊は、山の斜面が地下深くの岩盤から崩れ落ちる現象。大量の土石流がふもとの集落を襲えば、大きな被害を起こす。

 伊那谷は、南信濃地区の大部分を含む計百二十九カ所が危険地点と指摘された。燃油店の背後にも山がそびえる。男性は「いつ『山津波』が来るか分からない」と不安を抱える。

 広い中山間地を抱える県内では、過去に大規模な土砂災害が多く発生している。〇六年七月に県内を襲った豪雨は、岡谷市で土石流のために八人が死亡した。

 「私たちは、山の整備を怠ってきたツケを残していたと思わなくてはいけない」

 被害が集中した岡谷市花岡区で、陣頭指揮を執った前区長の小口●明さん(68)は、山の荒廃が被害を大きくしたと考えている。

 間伐されずに荒れた山は保水力を失い、大雨が降れば簡単に土砂崩れを起こす。〇六年の豪雨では、花岡区の近くの西山と呼ばれる山地で土石流が発生した。

 土砂をせき止めるため、県は一〇年度までに諏訪地域の渓流で三十基のえん堤を建設したが、山を荒廃からよみがえらせるには、何をするべきなのかという根本的な課題は残る。

 小口さんは「誰かが山を整備してくれるだろうではだめだ。住民が手を取り合って間伐や植樹、下草刈りをしないと」と話す。

 今年一月、山を手入れする「西山里山の会」を設立した。区民五十四人が山を巡回し、危険な場所を見つけた際は行政に連絡して、自分たちも間伐をする。

 「砂防事業などは国や県が進め、住民も山を整備し、それを自治体が支援する。そんな仕組みづくりができればいい」。行政と住民の役割分担が、防災につながると信じている。

 【注】●は、サンズイに「広」の旧字