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長野ニュース

<選択の時>(3) 貧困と教育

ながのパーソナル・サポートセンターの面接ブース。生活に困った人たちの相談が後を絶たない=長野市で

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 民主党政権は二〇〇九年の前回衆院選時に示したマニフェストで、高校授業料無償化や子ども手当創設といった、次世代育成に光を当てる政策を打ち出した。中でも授業料無償化はマニフェストの中でほぼ完全に実現した政策の一つで、経済的理由による高校中退者減少には一定の効果があったとされる。

 ただ、経済的支援だけでは手が届かない問題も深刻化している。貧困から子どもの教育に関心を持たない親の存在だ。こうした親のもとで育った子どもは成人後に社会へ十分に適応できず、貧困の連鎖に陥りがちだ。連鎖を断ち切るため、教育のあり方が問われている。

 不登校となっていた中学二年の少女に、松本市の元学校講師太田幸子さん(39)は、寂しげな印象を受けた。

 少女は母親と二人暮らしで、生活保護を受けている。母親は夜に働くため昼間は寝ていて、娘が学校に行かなくても気にしない。

 太田さんは、生活保護世帯の子どもの教育をサポートする支援員でもある。松本市が二年前から始めた事業で、市からの連絡を受けて少女の自宅を訪ねた。

 学校に行かせるよう母親を説得しても、心配する様子はない。少女に諭しても「はいはい」と、気のない返事が戻ってくるだけだった。

 それでも粘り強く訪問を重ねるうちに、ぽつりぽつりと言葉を交わすように。やがて「学校の勉強が分からない」と気持ちを打ち明けるようになった。

 太田さんは学校と相談し、少女の理解度に合わせた学習計画を立てると、少女は学校に通うようになった。

 文部科学省によると、県内で二〇一一年度に生活保護を受けている世帯の高校進学率は91・4%と、全県平均よりも7・3ポイント低い。高等教育を受けなかった経済的に恵まれない家庭の子どもは、社会的な自立を果たせないまま自らが親となり、次世代に貧困が連鎖しかねない。

 昨年六月に支援員になった太田さんは、現状に「ちゃんと働こうとしない子どもが増えてしまうのでは」と、やるせなさを感じている。

 「貧困予備軍」とも言える新たな層も生まれつつある。

 長野市中心部に事務所を構える「ながのパーソナル・サポートセンター」は、失業や多重債務などの問題を抱える人の自立を助けるため、昨年から活動を始めた。

 当初想定していたのは中高年の失業者だったが、実際に相談に訪れた千三百人の四割は二、三十代の若者。その大半は引きこもりやニートといった就労経験がない人たちで、センター長の美谷島越子さん(62)は「若い人がこんなに多いとは思わなかった」と驚く。

 多くは親頼みで暮らしており、親が老いて働けなくなっても、就労経験がないか、あってもわずかなため自力で生活する術を知らない。センターのスタッフが奔走して就職先を見つけても、すぐに辞めてしまう人も少なくない。

 「小中学生のころから、働くことの必要性をもっと教える必要があるのでは」。美谷島さんはそう考えるが、確かな処方箋は見いだせないでいる。