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三重ニュース

<見極める衆院選> (2)TPP 

農家の高齢化と消費低迷に悩む紀南地方のミカン=御浜町の選果場で

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 ハウスの熱気の中、緑色の果実が鈴なりになる。濃厚な甘さで知られる南国フルーツ「アテモヤ」だ。紀宝町の石本果樹園が県の指導の下、二〇〇四年から栽培している。

 園ではアテモヤに加え、かんきつ類四十種を生産し、大半をネットや電話注文で販売する。中でもアテモヤは贈答品として出回るうちに魅力が広まり、一個二千円以上の高級果物ながら、今では全国から注文が殺到する。「農家の側に工夫と努力が必要」。果樹園三代目の石本慶紀さん(35)は、そう考えている。

 地元のJA三重南紀では昨年から、タイへミカンの輸出を始めている。高級ミカンのブランドイメージを打ち出し、狙うはタイの富裕層。一足先に、高級果物で国内販路を開拓してきた石本さんは「貿易自由化の波は必然的。TPP(環太平洋連携協定)を恐れるのではなく、打って出る覚悟が必要だ」と期待を寄せる。

 ただ、ミカン産地には疲弊もうかがえる。紀宝町に隣接し県内最大の産地の御浜町では、かんきつ栽培面積が現在七百ヘクタールと、十年前と比べ二割減少。国内のミカン消費低迷と農家の高齢化が響く。

 会社を退職後、ミカン農家になった南木甫久(もとひさ)さん(76)は「老後の稼ぎにと、栽培を始めたのが間違い。年を経るごとに生活はカツカツだ」と頭をかく。

 一・三ヘクタールの畑を購入したものの、ミカンが市場でだぶつくようになり、現在使用するのはほぼ半分。一方で畑の造成工事などにかけた費用の返済が、年数十万円のしかかる。TPPによって貿易の自由化が進めば、海外から安価な農産物が押し寄せることになり「この上、外国産のミカンが入ってきたら、農家は全部つぶれる」。畑を継ごうとする長男(44)の先行きに不安を募らせる。

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 寒暖差が大きい伊賀の盆地がはぐくんだコシヒカリ、キヌヒカリ…。小屋で一時保管する米を横目に、伊賀市下柘植の農業奥沢重久さん(64)は「安い外国産の米に消費者の目が向いてしまえば、ダメージは大きい」とこぼす。

 九年前にJR西日本を辞め、父親から農地を受け継いで専業農家へ。三ヘクタールの田んぼで収穫した米は農協に出荷するほか、道の駅で販売するなど販路を工夫している。「味の差は歴然」と品質に自信を持つが、価格競争が迫られると心もとない。

 山あいにある二十戸ほどの集落は、一ヘクタールに満たない土地で耕作する兼業農家が主体。先祖からの土地を大事にする土地柄もあり、大規模化によるコストダウンは難しい。「仮に集約化するにしても、限界がある」。集落の今を見つめるにつれ、TPP交渉参加には否定的な思いがこみ上げる。

 <環太平洋連携協定(TPP)>原則としてすべての物品の関税をなくし、貿易や投資の促進を目指す多国間の自由貿易協定。アジア太平洋地域の米国や豪州、ベトナムなど11カ国が締結に向け、交渉に参加。日本国内では、締結によって自動車などの輸出産業の国際競争力が高まる一方、安い農産物やサービスにより農業や医療分野などで影響を被るとして、賛否が割れている。