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三重ニュース

<見極める衆院選> (1)消費税増税

閑散とした商店街にある店で商品の手入れをする渡辺さん。消費税増税で客足への影響を心配する=津市大門で

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 消費税増税の行方や環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加の是非など、今回の衆院選では、重く大きな選択が有権者に委ねられている。選択の結果は、私たちの生活に直結する。選挙の争点を切実に見つめる人たちの思いから、明日の暮らしを考えてみる。

 自動車部品を組み立てる作業台に「中断中」と記した紙が置かれている。「ここの人は今日は休み」。松阪市で、小さな工場を営む経営者の男性(82)がつぶやく。稼働していない作業台はこの日、場内の半数に及んだ。

 九月のエコカー補助金の終了によって国内の自動車販売が低迷し、部品の受注が減少。仕事が少ない日は、従業員に連絡し、自宅待機を伝える。「消費税が上がったら車が売れなくなる。うちの仕事もなくなる」と不安が募る。社会保障を守るため消費税増税はやむを得ないと思うが「まずは景気をようしてもらわんと。今のまま消費税だけ上がったらお手上げやわな」。

 津市中心部の大門商店街で半世紀にわたって時計店を営む渡辺伯男さん(81)も「消費税が上がれば、商店街で物を買わなくなる」と心配する。

 一九八九年の消費税の導入、九七年の税率アップのたび、商店街には駆け込み需要もなく、ただ客足が減った。品ぞろえや安さを売りにする郊外大型店の影響も相まって、店の売り上げは二十年前の一割になった。この日の来客は、昼を過ぎてもゼロ。夫婦二人の生活は月額十三万円ほどの年金が頼りで「本業だけではとても食べていけない」と話す。

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 年二回ある消費税の納付時期が近づくと松阪市で部品製造会社を営む男性社長(70)は「百数十万単位の金をどう確保するか頭が痛い」という。パートを含め従業員十人を抱える工場を不況下でも稼働させるため、数千円単位の少額受注や利幅の薄い仕事も数多くこなす。そのため利益が不安定になり売上金が入っても運転資金の足しや設備維持費に回りがちで、消費税分の積み立てもままならない。

 納付時期に足りないときは、金融機関からの借入金や簡保の取り崩しで何とか賄う。消費税が10%になれば納付額は単純に倍。「いざ払うとき、現金があるかどうか。経営の問題かもしれないが、どこの仕事でも引き受けるうちのような『何でも屋』が、余裕のある経営なんてできない」

 一家四人の家計を預かる伊勢市二見町の小学校非常勤講師の女性(38)も「ますます厳しくなる」とため息をつく。製造業で働く夫(40)の収入が家計の柱だが、業績の低迷により、昇給やボーナスはおぼつかない。対する出費は、小学三年の長男と来春入学の次男の習い事などで今後もかさんでいくことは間違いない。外食を控え、スーパーでは安い品を吟味して食費を削り、十年近く乗り続けている車を買い替えるべきか考えている。将来のため増税の必要性は分かるが、納得できない自分もいる。「本当に目に見えて生活が良くなることにつながるのか、分からない」

 <消費税増税>少子高齢化の進展を見据えた社会保障改革の一環で、安定した税収を確保するため、現在5%の税率が2014年から8%、15年に10%に引き上げられる見通し。専門家の試算によると、年収400万〜450万円の4人家族は、8%で年間6万2000円、10%で10万以上の負担増になる。