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愛知ニュース

TPP議論 西尾張の業界 見方は?

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 衆院選の争点の一つになっている環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加。本紙の候補者アンケートでは9、10区の十人のうち四人が「賛成」、六人が「反対」と回答が分かれた。西尾張を代表する繊維産業と農業の関係者の間でも、賛否は入り交じる。二つの業界関係者は、ともに活況とは言い難い現状を踏まえ、それぞれの立場で候補者の訴えに耳を澄ましている。

 ■農業

 「TPPには大反対」。愛西市草平町の農業加藤正夫さん(73)はきっぱりと言う。

 愛西市はかつて、ショウガ産地として七〜八割の全国シェアを誇った。一九九二年ごろから輸入が始まった安価な中国産に押され、ショウガ農家の多くは作物を切り替えた。

 ショウガ生産を続ける加藤さんもハウス栽培をやめ、規模は四分の一以下に縮小した。加藤さんは「海外産と対抗するのは価格の面で難しい」と漏らす。

 その愛西市などをエリアとするJAあいち海部(津島市)の日永組合長(69)は「米国や豪州の大規模農業には価格で太刀打ちできない。農地を守るために受け入れられない」と、TPP反対を鮮明にする。

 隣のJA愛知西(一宮市)の河内隆行青年部長(39)も、不安をぬぐえない。「すでに農業だけで食っていくのは難しい。日本の外交能力で、農地を守る交渉ができるのか」。亡くなった父の畑を継いで十五年、仲間は減る一方だ。

 交渉の末に何が起こるのか、各党が掲げる公約や候補の訴えからは分からない。国内で禁止されている農薬の使用は。産地表示ができなくなる可能性は−。心配が尽きない。

 農業への影響が懸念されるTPPだが、賛成派もいる。愛西市江西町の東方(とうぼう)伊佐司さん(50)は、その一人。

 東方さんは従業員三十人を雇い、ミツバや空心菜などの野菜を栽培。農協を通さず、取引する大手スーパーの専用コーナーで販売する。「自分で値段を決められるのが強み」。袋詰めなどの作業は外部発注もして分業化。効率的な経営方式を築いてきた。

 「小規模農家が栽培から出荷までを独力でこなすなど、日本の農業には無駄が多く見直すべきだ」と東方さん。「補助金に頼らない業界にするために、TPPに参加して変化を促した方が良い」と“開国”のメリットを考えている。

 ■繊維産業

 「関税が撤廃されれば、尾張の繊維産業が再興するターニングポイントになるかもしれない」。百七十八社が加盟する尾西毛織工業協同組合の早川隆雄理事長(60)は、交渉への参加を願っている。

 下降線をたどるこの地域の繊維産業。期待する理由は、生地の販売先である縫製業者の多くが中国に工場を置く実情にある。

 TPPの主な交渉先は米国やオーストラリアだが、交渉に入れば、それを追い風に日中韓の間で関税を引き下げる自由貿易協定(FTA)の交渉も盛んになりそうだ。

 早川理事長は「中国の安い服地製品が国内に増えると心配する声もあるが、国内に縫製業はほとんどなく影響はない。むしろ中国にはない尾州産地の技術開発力で、中国市場を開拓できる」と自信を見せる。

 一宮商工会議所会頭で、繊維商社モリリンの森克彦会長(66)は「繊維だけでなく日本経済の柱は輸出産業なのに、交渉不参加は鎖国のようなもの。争点になるのが不思議だ」と疑問視する。

 政党間の意見の違いに「選挙ではTPPに反対する特定の業界への配慮がみられるが、必要性はどの政党も感じているはず。政権を取れば、交渉参加にかじを切るだろう」とみている。

(藤嶋崇、荒井隆宏、安福晋一郎)