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富山ニュース

アベノミクス 届かぬ夜の街 響いた増税 苦しむ庶民

 十四日投開票の衆院選は、かつてないほど経済政策が注目されている。バブル崩壊後、一九九〇年代以降の「失われた二十年」からの脱却を願う有権者の声は切実だ。県内景気の実態は? 政治に期待する声は? 記者たちは、景気の影響を受けやすいとされる夜の繁華街へ繰り出し、富山の「ヨルノミクス」の現状を探った。(衆院選取材班)

足りぬ人材 選択肢ない 

 この冬初めての大雪が降った五日夜。富山市中心部の一角で三十五年続く老舗スナックのドアを開けた。高さ三メートル、幅一メートルの全面ガラス張りの酒の棚が目に入った。

 「お店の売りなの」とママ(64)。手元のボタンを押すと、常連客のボトルを並べた棚板が立体駐車場のように回転し、身長一五三センチのママの手元に届く。「バブル期のなごり。今でも外国人が写真を撮って喜ぶのよ」と笑みを返した。

 だが、客の出足を聞くと「バブル崩壊後もおかげさまで良い思いをしてきたのに。売り上げはピーク時の二割減よ」と嘆息。リーマン・ショックのあった六年前から官公庁や建設業、電力関係の常連客が来る回数が減った。続けて「ここ一、二年でさらに一割減。アベノミクス効果は、うちの店には届いてない」と打ち明けた。

 店のカウンターには、学生時代の同級生という定年間近のサラリーマン二人。「月のお小遣いは三十年間変わらず。消費税8%は響いた」とため息をつく。選挙は?との質問に「だめだと思う候補者の一票を減らす権利がほしい。庶民のつらさを政治家は分かっとらんもん。今回投票で誰の名前も書かん。『政治家よ。目標を大事にしてくれ』と書くんだ」。真っ赤なネクタイと同じ顔色の男性が、酔いがさめたように言い切った。

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 高岡市随一の歓楽街、桐木町。地元の“先生方”もよく訪れるというバーでは、「景気は良くなっている。業績も右肩上がり」との声があった。グラス片手に断言するのは、市内で保険代理店を営む男性客(45)。安倍政権になって顧客は伸びているという。「民主党政権は何してるか分からなかった。安倍(晋三)さんは前向き。それだけでいい。『よくなったよミクス』だ」との軽口も出る。

 一方で「安倍首相に町の中の経済なんて分からないでしょうね」とバーのマスター(67)はこぼす。この辺りの衰退は深刻だ。マスターによると、ここ二十年で三百三十店あった飲食店は二百五十店ほどに。「接待も少なくなった。輸入関係の会社の人は『円安でしんどい』とよく口にする」と話した。

 だがマスターは、安倍政権を完全には否定しない。「安倍さんのように政策を打ち出せる人はほかにいる? 選択肢がないから、気分は『仕方ないのミクス』ってとこかな」