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静岡ニュース

<検証>(上) 景気期待感 自民に票 

 十四日投開票の衆院選で静岡県は八小選挙区の議席に変化はなく、第三極勢力が消滅する結果となった。与野党は何を訴え、有権者はどのような選択をしたのか。県内の戦いを振り返った。

 十五日の県庁。自民党の選挙を指揮した大石哲司幹事長ら県連幹部は「安倍政権とアベノミクスは信任を受けた」と話したが、表情に高揚感はなかった。

 自民は小選挙区で前回選と同じく六勝したものの比例代表で議席を二減らし、県全体の議席は九から七に減少した。「景気回復の実感が津々浦々まで浸透していない」。1区を制した上川陽子法相は当選後の取材に、アベノミクスの地方への波及は道半ばだと強調。大石幹事長は「きめ細かな地方再生策を政府が打ち出すのが第一だ」と今後の政権運営に注文を付けた。

 中日新聞社の世論調査では、県内の大半の有権者が投票で重視する課題に経済政策を挙げた。ただ「アベノミクスで生活は変わらない」との回答が六割弱、「やや悪くなった・悪くなった」は三割を占めた。恩恵を感じる県民は少数派だが、選挙戦で「アベノミクスの継続」を前面に打ち出した自民が、支持を集める「ねじれ」が生じた。

 白鳥浩法政大教授(現代政治分析論)は「生活が良くなったという人は少ないのに、評価する人が多いのは、近いうちに自分にも恩恵があると思っているのかもしれない」と、先行する期待の反映とみる。

 原発再稼働問題でもねじれが起きた。中部電力浜岡原発(御前崎市)がある3区での投票後の出口調査によると、再稼働反対は六割で、賛成の二倍に上った。だが投票の際に原発政策を重視した有権者は一割以下。反対と答えた四割が自民候補に投票し、脱原発を訴えた野党候補は反原発票を十分取り込めなかった。

 実際の再稼働がまだ差し迫っておらず、暮らしに直結する景気を有権者が優先したともみえる。

 白鳥教授は「アベノミクスという魔法のひと言で原発、憲法、集団的自衛権の問題が隠されてしまった」と自民の選挙戦術を批判。大石幹事長は「身近な地域の課題、特に経済は普遍性がある」と反論する。

 経済政策で野党が対案を示せなかった影響もあり、県内投票率は55・60%と戦後最低に落ち込んだ。1区で落選した維新前職小池政就氏は「政治に対する信頼が損なわれている」とあらためて深刻さを指摘した。

(衆院選取材班)