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静岡ニュース

<有識者インタビュー> 「経済政策」 元浜松学院大教授 佐藤克昭さん

 十四日の投開票へ向け、衆院選候補者たちが連日、景気対策の論戦を繰り広げる。消費税再増税の先送りで「経済再生と財政健全化に道筋をつけられるかが鍵だ」と話すエコノミストの佐藤克昭・元浜松学院大教授に、争点の経済政策について聞いた。

◆地域再興へ対策望む

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 −安倍政権の経済政策による静岡県内経済への波及効果や課題は。

 「景況感は回復に転じ、不動産価格の上昇も生じている。スズキやヤマハなどの大手輸出型企業は円安効果と海外経済の好調に支えられて業績が向上し、雇用、賃金動向も改善基調に転じた」

 「ただし、アジア諸国を中心に現地生産・調達・販売が進み、かつてのようには輸出が伸びない上、急速な円安による輸入(仕入れ)価格の高騰は、中小零細企業の収益を圧迫し、裾野まで好況感が広がらない。雇用の増加も非正規労働の割合が大きく、所得格差などから恩恵が家計全体には及んではいない」

 −必要な対策は。

 「アベノミクス第三の矢(成長戦略)が鍵だが、これまで目に見える成果は上がっていない。県も内陸フロンティア構想や産業成長戦略を掲げるが、具体的な展開はこれからだ。産業空洞化を埋める取り組み、内需の振興や投資の呼び込みなど、地域再興へ実効性ある対策が望まれる」

 −消費税8%への増税は県内にも響いた。

 「増税前の駆け込み需要の反動から県内の企業業況判断はマイナスに転じた。特に小売業の落ち込みは大きく、個人消費の回復が遅れている。物価上昇が所得の増加を上回り、節約志向が強まっているからだ」

 −再増税先送りで、取り組むべき課題は。

 「増税先送りの一方で国債増発による財政リスクの高まりや、年金、医療、介護など社会保障費は増え続け、地方自治体の財政にも一層の厳しさが及ぶ」

 「先送りの間に経済再生と財政健全化への道筋をつけ、持続的成長に向け規制緩和や歳出の見直しなど、痛みを伴う改革を断行できるかどうかだ。避けては次世代にツケを残すことになる。再増税に当たっては、軽減税率などの適用だけでなく、思い切った地方分権や地方創生の促進による底上げが不可欠といえる」

 −県内の有権者に衆院選で考えてほしいことは。

 「選挙は未来への重要な選択である。今回は経済政策の継続の是非が問われているが、暮らしに直結する働き方の改革や子育て環境の整備なども大きなテーマ。海外展開が進む自動車産業を主体とする本県の産業構造は、これまでのような成長が見込めない」

 「少子高齢化、人口流出が重なって県内推計人口も三百七十万人の大台を割り、日本の縮図といえる静岡県も大転換期を迎えている。社会・経済の活性化には人材の重要性がますます高まる。将来を担う若者も投票所に足を運び、どの候補者にかじ取りを託せるか、それぞれの意思をしっかり示してもらいたい」

(聞き手・赤野嘉春)

 さとう・かつあき 1944年、浜松市北区三ケ日町生まれ。同志社大卒。静岡銀行入行後、静岡経済研究所に出向し、専務理事や副理事長を歴任。2008年に佐藤経済研究所を設立し、ローランド社外取締役や浜松学院大教授を務めた。現在、県行財政改革推進委員会委員長、県森の力再生事業評価委員会委員長など務める。