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滋賀ニュース

<現場の声から>原子力防災

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 十一月中旬に高島市などであった原子力災害を想定した訓練。避難場所に指定されている今津西小学校体育館に、一般市民と合わせて三十〜七十代の知的障害者が駆け込んできた。

 学校から三キロほど離れた障害者支援施設「杉山寮」の入所者十六人で、訓練は初参加。施設は福井県境まで二キロと近く、関西電力の大飯原発や美浜原発からはUPZ(緊急時防護措置準備区域)の三十キロ圏に入る。

 体育館に入った入所者は、防護服に身を包んだ市職員から安定ヨウ素剤の説明を受ける際、うろうろ歩き回ってしまうなど落ち着かない様子も。放射線量を測定するスクリーニングを敬遠する人も見られた。

 堀一彦施設長(48)は「うちには肢体不自由者もおり、実際に事故が起きたらどれだけ混乱するだろうか」と不安を口にする。

 東京電力福島第一原発事故をきっかけに、国は新しい規制基準をつくり、原発再稼働前の審査を進める。だが稼働の有無を問わず、各原発に保管される使用済み核燃料に対する懸念もある。近隣住民や自治体には不安と万一に備える負担が重くのしかかる。

 訓練を見守った福井正明市長は「住民を避難させる輸送バスを確保できるかも含め、課題はたくさんある。近くに危険がある以上、少しずつでも訓練を重ねて備えていくしかない」と話す。

 「備え」は訓練にとどまらない。長浜市は全市民約十二万人分の安定ヨウ素剤を購入。県も独自に放射性物質の拡散予測をしたり、新設した原子力防災室に職員六人を配置したり。いずれも自治体の自主財源を充てており「原子力政策が国主導だったことを考えれば、国や事業者が負担するのが筋」と県市の担当者は憤る。

 高島市の担当者は大津市方面などへ抜ける交通網の脆弱(ぜいじゃく)さに触れ「本当に避難態勢を整えるならば高島市にとって必要なのは道路。国に手掛けてほしい」と訴える。だが費用と時間が掛かる。実現のめどは立たない。

 障害者とともに訓練に参加した高島市民の七十代の男性はつぶやく。「どこまで備えなければならないのか」。課題だけが地域に横たわっている。

 (井上靖史)

 =おわり