文字サイズ

滋賀ニュース

<現場の声から> TPP

写真

 「聖域なき関税撤廃は阻止してほしい。そうでないと農家は立ち行かなくなる」。近江八幡市と東近江市にまたがる県内有数の近江牛の産地、大中地域の肉牛肥育農家、井ノ口幸太郎さん(62)=東近江市大中町=は厳しい口調で話した。

 環太平洋連携協定(TPP)。参加国は関税原則撤廃や規制緩和を目指し、日本はコメや牛肉など農産物五項目の関税について聖域として保護するよう主張している。

 二年前の総選挙で自民党は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対」と主張して選挙を戦い、安倍晋三政権は交渉に参加した。以降、農業団体は関税撤廃により安い農産物が海外から入り、国内農業が壊滅するとの恐れをいだく。

 大中地域は、国の食糧政策で一九六六年、内湖を干拓してできた。現在は二百戸ほどの専業農家が千ヘクタールの農地でコメを基幹作物に畜産や野菜を加えた複合経営で農業地帯を形成する。近江牛二百頭を肥育する井ノ口さんは「円安で輸入飼料は値上がりし、子牛の値段も20%ほど上がった」と顔を曇らせ、環境変化が気になって仕方ない様子。「国益を考えたらTPP加盟は必要かもしれないが農業に関していえば、だめ」と語気を強めた。

 農業者の高齢化や後継者不足が叫ばれて久しいが、大中地域は世代交代が比較的うまくいっている。親子で畜産を営む井ノ口さんは「外国に農産物を依存して食糧危機になったらどうするの。責任与党は農地を守り、安心して農業ができる環境づくりに取り組んでほしい」。祈る思いだ。

 一方、二十二年前から集落で大型機械を共同購入し、作業受託でコメ作りに取り組む甲良町法養寺の農事組合法人サンファーム法養寺。小規模農家が農業機械を購入して先祖伝来の農地を守る農業は限界を超えているとして「集落の農地は集落で守る」を実践する。

 理事の上田栄一さん(63)は、TPPの議論は、各農家が生き残りを考える良い機会と考える。「TPP加盟に反対する気持ちは分かるが、関税が撤廃されたことを見据えて、農家は生き残り策を考え、実践するとき」と話す。

 (前嶋英則)