文字サイズ

滋賀ニュース

<現場の声から> アベノミクス

加工機の前で完成した部品の出来栄えを確認する乾さん。今後の設備投資に頭を悩ませる=大津市本堅田で

写真

 十一月初旬に東京都内であった工作機械の見本市。大津市本堅田の金属加工業者「乾工作所」の専務乾幸太郎さん(43)は、一台の機械の前で足を止めた。立体金属加工ができる最新型の3Dプリンターだった。購入したい気持ちはあったが「一億円はするだろう」と資金繰りのことが頭をよぎった。結局、価格を尋ねることもせず、その場を後にした。

 同社は従業員五人の町工場。真ちゅうやステンレスなどを加工し、配電盤や電柱、火力発電所の部品として出荷している。以前は手作業で金属を削っていたが、現在は簡単なボタン操作で動く複数のドリルが手のひらサイズのねじなどを作る。

 工場で稼働する九台の機械をそろえるのにこれまで一億円以上投資した。毎月四百五十万円の売り上げでは一台あたりの減価償却に十年以上かかるという。

 売り上げは横ばいの状況が続くため「設備投資はイチかバチか。失敗して倒産した仲間もいる」と乾さん。行政の後押しに期待したいところだが、自動車などの輸出製品を扱わず、公共事業とは無縁のため「アベノミクスの恩恵は何もない」と肩を落とす。

 材料を購入する販売店を変えて仕入れ値を落とし、今年四月の消費税増税は乗り切った。10%への増税を否定するつもりはないというが「受注の動きは小さくなるかもしれない」と頭を抱える。

 金融緩和と大規模公共投資で円安や株価上昇などをもたらしたアベノミクス。二〇一三年度決算で業績回復を強調する大規模メーカーも多かったが、企業の99%が中小企業にあたる県内では景気回復の足音は聞こえてこない。東京商工リサーチ滋賀支店によると、今年十月末までの負債一千万円以上の倒産件数は九十六件で、昨年一年間の倒産件数を上回った。加えて、滋賀銀行関係者は「公共事業による好況も止まりつつある」と指摘する。

 乾さんは設備投資などに充てる中小企業向け支援金や、下請けに現金を循環させるよう用途を定めた大規模メーカーへの支援などの必要性を訴える。「経済政策を進めるのは良いが、中小企業にも目を向けてほしい」。

 (山内晴信)

写真

    ◇     

 安倍政権の二年間の成否が問われる衆院選の公示(十二月二日)まで残りわずか。選挙戦の争点となる課題は県内ではどのように受け止められているのか。課題の現場を訪ね、現状を探った。