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<師走困民>(3) 真の狙い 隠してる?

 メガネにパソコンの光がぼんやりと反射する。画面に映し出された青地のタイトルは「GLOBALEAKS」(グローバリークス)。内部告発を募るインターネットのサイトだ。この師走中の開設を目指し、埼玉県飯能市にある駿河台大の専任講師(経営情報論)、八田真行(35)の作業は大詰めを迎えている。

 そんな八田が「困ってます」と言う。サイトのことではない。衆院選の投票日まで間もなく。街中を走る選挙カーの声が熱を帯びるほど「もやもや」が募る。

 八田はアベノミクスの支持者だ。デフレから脱却するには大胆な金融緩和が不可欠だと思うし、首相の安倍晋三が「この道しかない」と訴えるのは理解できる。それなのに一票を託す先が決められない。

 「グローバリークス」は内部告発をしたい人がサイトに登録されたメディア関係者の中から相手を選び、匿名で情報を提供できる仕組み。八田自身は情報内容に触れず、告発者とメディアを直接つなぐ。米国の機密文書を大量公開し、世界中を驚かせた「ウィキリークス」に着想を得た。

 実際に開発を始めたのは昨年末。ちょうど与党が国会で強行採決し、特定秘密保護法を成立させたころだった。

 国家にとって守るべき秘密は当然あると八田は思う。ただ、ちょっと気に入らない。特定秘密の定義が「あいまい」で、際限なく拡大しかねないこと。漏えい者に厳しい罰を科すなど「内部告発したい人が萎縮してしまう」こと。グローバリークスには「むやみに情報を隠そうとする国家に対する抑止力にしたい」との願いがこもる。

 アベノミクスは正しい。だけど、八田は日本が「風通しがいい」国であってほしいと思う。あの法律が自らに都合が悪いことまで隠すためならこの国は息苦しく、住みづらい。

 「安倍さんにはアベノミクス以外にも選挙で勝ってフリーハンドでやりたいことがあるのに隠してるんじゃないか」。八田にとって最大の「もやもや」だ。

 特定秘密保護法は十日、施行された。首相官邸前では前日から抗議デモが続き、「廃止」を求める声が寒空にこだました。ただ、八田はこうしたデモに参加する気になれない。「廃止か改善へ、声を出し続けていく必要はあるとは思うけれど…」。首相に聞く耳があるのかどうか、つい疑念が先に立つ。

 この選挙で国民の反対が根強いテーマに関して首相の口から「この道」を聞いた覚えがない。都合が悪い論争を避け、数の力で事を推し進める−。特定秘密保護法はそうやって決められ、施行された。ひょっとして選挙後、その他の重大事も…。

 繰り返すが、八田にとってアベノミクスは正しい。野党の主張で目立つのは「無責任」に感じるアベノミクスへの批判ばかり。

 アベノミクスへ一票を。いやいや、それですべてを認めたことになってはたまらない…。

 「だから、困っているんですよ」。メガネの奥の目が遠くを見た。

 (文中敬称略)