文字サイズ

連載

トップ > 2014衆院選 > 連載一覧 > ニュース

<師走困民>(2) 安全保障 なぜ“脇役”

 師走に大学三年生が数人寄れば大抵、シューカツ(就職活動)話に花が咲く。「もう業種決めた?」「まだまだ」「俺も。決め手がなくて」なんて感じ。

 名古屋市昭和区の大学三年、木村朋樹(21)ももちろんシューカツは気になるのだが、もうひとつ、友人間ではまったく気にされていないことが気にかかる。

 十四日、衆院選の投票日。昨年夏の参院選後に二十歳を迎えた百五十万人前後の新有権者の一人、木村が初めて国政選挙で“一票”を行使できる日だ。

 木村はついこの間まで、政治にさほど関心のない「ふつうの大学生」だった。

 七月一日。集団的自衛権の行使容認が閣議決定されたあの日は確か、大学の部活内のこじれた人間関係を何とかしようと走り回っていた。マスコミは騒いでいた気もするが、漠然と「友だち(米国)が殴られれば、助けるのは普通でしょ」と感じていた。

 「うん?」と引っかかりを感じるようになったのは九月に入り、国際問題などを扱う講義を受けるようになってから。政府は、密接な関係にある他国が攻撃され、国の存立が脅かされた場合、集団的自衛権を行使できるとしている。「密接」ってどこの国か。「存立」ってどういうことか…。「どうにでも解釈できる。要するに戦争する国に近づいたってことじゃないの」

 首相の安倍晋三は今年二月、行使容認の解釈改憲について国会で「最高責任者は私だ」と言い、その是非は「選挙で国民から審判を受ける」と語った。しかし、その首相が今回の選挙で問うたのは「消費税増税の先送り」という、あまり反対のない決定について。

 公示後、首相は「この道しかない」としきりにアベノミクスをPRする一方、安全保障問題は脇に置いたまま。行使容認のための関連法案の制定は選挙後の来年に先送りされているが、自民党が勝てば、首相は言うのだろうか。「国民にも信任されました」と。

 「そんなの変です。困りますよ」と木村。

 最近、高校一年のときに八十六歳で亡くなった祖父のことを思い出す。戦時中、旧満州の開拓に志願。今の木村と同じ年ごろで終戦を迎え、旧ソ連の捕虜となった。極寒のシベリアで仲間が次々と倒れる中、雑草を食べて飢えをしのいだ−。そんな話を聞いた覚えがある。

 今月に入り、初めてひもといたが、祖父が三十年ほど前に自費出版した本にこんな一節があった。

 「戦争を知らない人が多くなり、戦争の恐ろしさを忘れたような声を耳にするとき(中略)我々の歩いてきた戦争への道を振り返って、再び戦争を起こさず、世界の人々に好かれ、親しまれる日本人として一人一人が進むことを誓わなければならない」

 木村はとりあえず、友人と会うとき、シューカツ話以外にこんなことを聞き始めた。「投票行く?」

 この国が「いつか来た道」をたどらないよう、選挙が終わってからも自分なりに学び、声を上げていくつもり。少し遅れたかもしれないが、まだ遅くはないと思う。

 (文中敬称略)