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<見極める プロの目>提言その5 目立たない所も見よう

山田満知子さん

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 愛知県豊田市にある中京大アイスアリーナ。「もう大詰めだからね〜」。フィギュアスケートコーチ、山田満知子さん(71)の視線の先で、日本の主力選手、村上佳菜子さん(20)が入念に滑りのチェックを繰り返している。4位に入ったグランプリシリーズNHK杯開幕の三日前のこと。氷上は一層、熱を帯びていた。

 さて、間もなく“開幕”というのに対照的に思えるのが今回の衆院選だ。一強多弱と呼ばれる政界で、最強の自民党に対するは二〇一二年の前回衆院選で政権の座から滑り落ち、党勢が回復しない民主党や、離合集散ばかりが話題になる「第三極」など。

 どうせ政権交代はない−。ちまたにはそんな雰囲気が漂う。山田さんによると「スケートでは振付師が同じだと(演技の)流れも同じになってしまう」そうだが、選挙後の政治も代わり映えしないだろうし、というのが冷めたムードの理由だろうか。

 もし、そう感じるならせめて、安倍晋三政権という選手の魅力をじっくりと採点してみてはどうだろう。

 伊藤みどりさん、恩田美栄さん、中野友加里さん、そして浅田真央さん。数々の有名選手を育て、名伯楽と呼ばれる山田さん。わずか五、六歳でその門をたたく子も多い。

 柔軟性、ジャンプ力や表現力…。才能は目に見えそうだが、山田さんが重んじるのは違う。選手たちに必ずこんなことを伝える。「うまくなればなるほど頭を下げなさい」。家族やコーチ、仲間、大勢の人に支えられていることを自覚し「自分に合った人ばかりでなく、あらゆる声に耳を傾ける素直さ」が大事だからだ。五輪選手でもそう。「政治家だってそうでしょ」と思う。

中田宗男さん

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 山田さんと同じく、目を見張る長所以外のところに選手を見極めるポイントを求めるのはスカウト歴三十一年という中日ドラゴンズのスカウト部長、中田宗男さん(57)だ。

 例えば、〇六年に大学生・社会人ドラフト三巡目で指名した投手の浅尾拓也さん(30)。「全身がバネのよう」な投げっぷりはもちろんいいが、捕手出身のせいか、小さく腕を引くフォームに中田さんは注目した。「球の出どころが見えにくく、バッターには打ちづらい…」。プロで通用するかどうか。ひとつの長所だけで判断しては危うい。

 たぶん“安倍選手”の魅力も得意技のアベノミクスだけでは分からない。今回の選挙では、今のところ、あまり注目されていないエネルギーや安全保障政策にこそ、真の判断材料が隠れているかもしれない。そして、批判も含め、あらゆる国民の声に耳を傾ける素直さがあるかどうか…。見極めるのは有権者だ。=終わり(この連載は長田弘己、奥田哲平、佐藤航、斎藤雄介が担当しました)

 <やまだ・まちこ> 名古屋市出身。選手として国体少年の部やインターハイで優勝。引退後、指導者に転身した。1989年スポーツ功労者など受賞。著書に「素直な心が才能を伸ばす!」(青春出版社)。

 <なかた・むねお> 日体大卒業後、1979年、投手として中日入り。5年間で7試合に登板し、1勝。引退後にスカウトに転身し、2003年からスカウト部長。