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<岐路 安倍政治2年を問う>(下) 消えた脱原発依存

 「再稼働は、電力会社のためとしか思えない」

 年明けにも再稼働する可能性がある九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)。東京電力福島第一原発事故を受け、福島県双葉町から家族で鹿児島市に避難してきた自営業遠藤浩幸さん(48)は、また原発に悩まされることになった。「事故が起きれば避難計画も役に立たない。事故の責任は誰も取れるわけがないのに」と憤る。

 住民の不安をよそに、安倍晋三首相は今年七月、九電会長ら九州の財界人約二十人が出席する会合で「川内は、なんとかしますよ」と再稼働に意欲を示したという。

 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると認めた原発は、再稼働させるというのが政府の立場だ。

 もともと自民党は二〇一二年の前回衆院選で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」を公約にしていた。しかし、政権獲得後の一三年参院選では消えた。

 それどころか、政府が今年四月に閣議決定したエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード電源」と規定。原発事故の教訓を国際社会と共有するとして、原発輸出も成長戦略の柱に据える。破綻状態の核燃料サイクルも継続する方針だ。

 問題は安全性。首相は、規制委の審査によって再稼働に求められる安全性は確保されていると説明するが、規制委の田中俊一委員長は「リスクがゼロということはない」。想定外の事態が起きる可能性は否定できないのに、かつての「安全神話」に戻りつつある。

 一方、福島第一原発では汚染水漏れが続く。

 首相は東京五輪招致がかかった昨年九月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」と発言した。しかし現実には、建屋地下の汚染水が海に流出するのを止める作業が難航。建屋と地下トンネルの接合部を凍らせる「凍結止水工事」は断念に追い込まれ、解決のめどは立たない。

 原発の発電コストも問い直されている。政府の試算では一キロワット時当たり八・九円だが、公益財団法人「自然エネルギー財団」が原発事故を踏まえて事故対策費などを計算すると、一四・三円。石炭火力や液化天然ガス(LNG)火力より高く、優位性は失われる。

 今年は、電力の使用量が最も増える夏を、福島の事故後初めて原発ゼロで乗り切った。省エネ機器の普及と、節電意識の浸透が大きい。再稼働を急ぐ政府の方針と裏腹に「原子力に依存しなくてもよい経済・社会」が実現しつつある。

 それでも原発依存に回帰するのか、ブレーキをかけるのか。重大な岐路に立つ。(荒井六貴、安藤恭子)

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