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長野ニュース

被災地の有権者に聞く

 十四日の衆院選投開票が近づいている。今回の選挙に有権者は何を求めているのか。自然災害に見舞われた白馬、木曽の二つの地域を歩き、住民らの思いを聞いた。

◆白馬 生活で精いっぱい

 「お見舞いとお願いを申し上げにまいりました」。県北部を震源とする最大震度6弱を観測した地震で大きな被害を受けた白馬村。九日午後、雪化粧した村内を縦断する国道148号を一台の選挙カーが通った。

 国道脇の神城地区に住む農業伊藤佳寿美さん(72)は自宅の損壊は免れたが、近所には家を失った人がたくさんいる。選挙カーの行方を眺めながら「雪対策や家の片付けが慌ただしくて、みんな選挙どころじゃないよ」と心情を代弁した。

 村内は住宅五十九棟が全半壊し、百三十六棟が一部損壊する県内で最も大きな被害を受けた。旅館やホテルなどの二次避難所は今も百二十人以上が身を寄せて、非日常の生活が強いられている。

 村内を歩くと、年内の完成を目指す仮設住宅の建設や倒壊した家屋を解体する重機の低いエンジン音が響く。

 「夢であってほしい」。神城地区で経営する民宿兼自宅が全壊した柏原穣さん(67)は、解体される建物を前に、こんな思いを拭い去れないでいる。

 民宿は来年創業五十年を迎えるはずだった。妻(67)は地震で建物の下敷きになり腰の骨を折って入院しており、一人で親戚の家に身を寄せる。現実と向き合うことで精いっぱいという。

 「こんなこと言っては駄目なんでしょうけど選挙には七百億円がかかる。そんなお金があるなら復興に回してくれよって」。思わず本音をつぶやいた。

 それでも投票所には足を運ぶつもりだ。「選挙は国民の義務だから。生活再建を最優先にやってくれるところにお願いしたい」

◆王滝、木曽 観光支援に期待

 九月の噴火以降、観光への打撃が続く御嶽(おんたけ)山の麓では観光業者らが苦悩の中、選挙戦の行方を見守っている。

 王滝村で旅館を営む家高弘文さん(63)は、今冬の経営に危機感を募らせる。村内にあるスキー場が十二月のオープンを見送った影響で団体客のキャンセルが相次ぎ、予約は例年より数百人減った。

 就業者の八割が観光関連の仕事に就く村では、失業者も出始めている。「スキー場が営業していないことがボディーブローのように効いている。麓の経済が元気になる政策を期待したい」と願う。

 木曽町の玄関口のJR木曽福島駅前で土産店を経営する川合克巳さん(48)は「選挙をやっている場合かというのが正直な思い」と不満を漏らす。

 店にかつてのにぎわいは見られず、選挙中に復興が滞ってしまわないか気がかりだ。「観光業者の支援を県任せにせず、国もできることを考えてほしい」。木曽の復興に動く国の姿に期待を寄せた。