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長野ニュース

<一票に託す> 中山間地からの声

飯田市の山あいに広がる下栗の里=飯田市で

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 候補者名を連呼する選挙カー、街頭演説で支持を訴える候補者たち…。師走の衆院選が公示され、市街地は一気ににぎやかになった。ところが、広大な面積を誇る南信には、そんな選挙の盛り上がりをまったく感じない中山間地がある。候補者の姿が見えない地域で、住民らは政治に対すしてどんな思いを抱いているのだろうか。 (衆院選取材班)

 標高一、〇〇〇メートル。斜度三〇度の山の斜面に、へばりつくように民家が点在する飯田市上村の“下栗の里”。市中心部から車で約一時間。狭く、曲がりくねった山道を登った先にある集落には約百人が住んでいる。

 里で生まれ育った農業の男性(80)は「選挙カーなんてほとんど来ない。ここで街頭演説や集会が開かれたことなんてあったかな…」と記憶をたどる。

 これまで直接、候補者から政策を聞いたことがないという男性は「いつもポスター見て、投票先を決めとるわ」。若者が去り、過疎が進む里の現状を打開してほしいとも思うが「選挙に行っても何にも変わらん」とあきらめ顔だ。

 飲食店を経営する女性(55)は「候補者は里のことなんか考えとらん」と話す。「ここはわずか百票程度にしかならない小さな集落。票数が少ないから誰も来ないんでしょ」と冷ややかだ。

 ただ、国民の義務を果たすために投票には行くつもりだ。「あきらめているけど、本当は候補者本人から政策を聞きたい。私たちだって有権者なんだから」と話す。

自然豊かな山里の風景が広がる長谷地域=伊那市長谷で

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 伊那市と二〇〇六年に合併した旧長谷村。市中心市街地から車で三十分、南アルプスのふもとに広がる集落の選挙人名簿登録者数は、十二月一日現在で千六百五十六人。六十五歳以上の高齢化率は40%を超える。

 「一部の候補者の集会は開かれるけど、選挙カーは来ない」。飲食店経営の男性(63)はこれまでの衆院選を振り返る。政府要職を歴任した衆院議員を輩出した長谷地域では、それぞれの家庭の中で代々、投票する政党が決まっているケースが多い。男性は「多くの人はずっと前から投票先を決めている。だから候補者も演説に来ないのかもね」と続けた。

 一方で、投票先を決めていない人たちには不満がくすぶる。六十代の主婦は「地域の声を国政に届けたいと訴えるなら、現場を見に来てくれたらいいのに」とつぶやく。

 政策など候補者選びの基準にする情報は新聞やテレビで集める。それでも候補者本人から訴えを聞き、地域の思いに耳を傾けてほしいと願う。主婦は「人口が多い都市部に力を入れるのは仕方ない」と話しながらも、「もっと人口が減って、長谷の存続が危ぶまれるような状況にならないと誰も来てくれないかもね」とさみしそうに肩を落とした。