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三重ニュース

<届けこの声>(下) 地方創生

 下りたままのシャッター、人通りのまばらなアーケード。県都・津市の中心部の大門大通り商店街で眼鏡店「メガネの服部」を切り盛りする伊串裕子さん(60)は、寂れた街の風景を眺めながら、吐き捨てるように言う。「地方創生なんて、ちゃんちゃらおかしい」

 安倍首相が最重要課題の一つに位置付ける「地方創生」。衰退する商店街にとっては歓迎すべき政策のはずだが、伊串さんには選挙のたびに繰り返される美辞麗句にしか聞こえない。「地方のためにと言いながら、結局は消費税を上げる。商店街の小さな店は商売が立ちゆかなくなる。どうやって『創生』するんですか」

 商店街として新しい取り組みを始めたくても、組合費のほとんどがアーケードの電気代で消える。アーケード一帯に設置されたスピーカーは壊れたまま。「どこの商店街も状況は同じ。本当に厳しい」

 中心市街地の空洞化とともに、山間部の集落などでは深刻な過疎高齢化が進み、消滅も危惧される。

 和歌山県との境にある熊野市紀和町和気地区は高齢者を中心に五十人が住む「限界集落」。住民の一人、村瀬和孝さん(37)は、これまでに国が打ち出してきた地方活性化策を「現場を知らない机上の空論ばかり」と感じる。

 集落では数少ない若者として、休耕地でのレンコン栽培など、農業による活性化策に取り組む。それでも若い移住者はなかなか現れず年々、高齢化が進む。

 安倍政権は地方創生の施策の一つとして、中央省庁から若手職員らを地方自治体へ派遣する制度の創設を打ち出す。だが、限界集落で暮らし、その現実を目の当たりにしている村瀬さんは「官僚が地方に来たところで何をやるのか。分からない」と首をかしげる。

 住民の命を守る医療の分野でも、格差は広がる。高齢化率が四割を超える志摩市大王町は、人口千人あたりの診療所数が全国平均(0・78)の半分以下の0・27。深刻な「医療過疎」が進む。

 大王町で内科医院を営む阿川茂さん(58)は一九八九年、堺市の病院から旧大王病院(現志摩市民病院)へ赴任。「医師の立場でこの町を守りたい」と、九七年に大王町で開業した。

 住民の不安を少しでも取り除こうと、今年二月から日曜日にも診察を始めた。緊急を要するケースに限っているが、日曜だけで毎月四十人もの患者が訪れる。

 多くの政党が、選挙のたびに「医療の地域格差の是正」を訴える。だが、実効性のある施策が打ち出されたためしはない。「診てもらえるところがあれば、地域の人たちの安心感は増し、新しい人を呼び込むことにもつながる」。医療の充実が、地方創生への第一歩だと信じている。

 <地方創生>地方活性化や人口減少の抑制に向け、安倍政権が最重要課題の一つに掲げる。衆院解散の直前に成立した関連法案の「まち・ひと・しごと創生法案」は、人口減対策などを国の責務と定めており、今後策定する総合戦略で具体的な政策を打ち出す。安倍首相は「これまでとは次元の異なる大胆な政策」とアピールする。