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三重ニュース

<届けこの声>(上) 消費増税先送り

 「大義がない」とも言われる十二月二日公示の衆院選。だが、有権者にとっては安倍政権の是非を問う貴重な機会となる。アベノミクスの失速が懸念される中、先送りされた「消費税増税」。看板政策として掲げられながら女性閣僚の不祥事で宙に浮いた「女性の活躍推進」。まだ実効性が見えない「地方創生」…。暮らしや仕事に深く関わる三つのテーマで、三重の有権者の声を聞いた。

◆一時の余裕 残る不安

 レシートの金額を支出の欄に書き写すたび、増税の重みをひしひしと感じる。小学一年生の長女と幼稚園年中の長男を育てる津市阿漕町津興の主婦桐生由実子さん(40)は、ほおづえをつきながら家計簿に目を落とし、ため息を漏らした。

 毎日欠かさず、家計簿を付ける。消費税が5%から8%へ引き上げられた四月以降、少しでも家計の負担を減らそうと、光熱費の節約を徹底した。電気をこまめに消すのはもちろんのこと、炊飯器ではなく、土鍋と保温効果のある鍋帽子を使って短時間でご飯を炊く。毎月のガス代と電気代を折れ線グラフにして、増税前と何度も見比べた。

 地道な節約のかいあって、電気代とガス代は増税前とほぼ同額に抑えている。それでも限界はあり、家計は苦しくなる一方だ。「最近、子どもたちが食べる量が増えてきたので食費もかさむんですよ。でも、教育費は減らしたくないし」

 10%への増税が見送られることに、「物価も上がってきてますし、余裕ができるのは助かる」とひとまずはほっとする。ただ、子どもの将来を考えると「暮らしは大変ですが…やっぱり、上げなきゃいけないんでしょうか」と複雑だ。

 増税は中小企業にとっても死活問題だ。住宅のリフォームや修繕などを請け負う従業員十二人の「伊藤鈑金工作所」(四日市市川原町)。夫と二人で切り盛りする伊藤良子さん(50)は「時期が延びても上がることには変わりない」と先送りの判断を素直に喜べずにいる。

 アベノミクスで景気に高揚感が出ていた今春、企業の設備投資に関連した需要が増え、三人の社員を新たに雇った。だが、好景気に陰りが見えてきた今、さらなる増税への不安がのしかかる。

 新入りの三人はいずれも二十代で、一人前の職人になるには五年はかかる。「安心して働き、経験を積んでほしいから賃金を下げるわけにはいかない。将来やりくりできるかどうか」と頭を悩ませる。

 一方、増税分を財源に充てるはずだった社会保障の充実は、先送りによって実現が難しくなる。その中には介護職員の待遇改善も含まれる。

 明和町志貴の特別養護老人ホーム「ウェルハート明和」職員の刀根礼子さん(39)は、慢性的な人手不足にあえぐ現場を「もっと余裕があれば…」と嘆く。

 国の基準は入居者三人につき一人の職員を配置すればいいが、ここでは二人に一人。それでも業務量に比べて手は足りない。入所者の様子を家族に伝えたくても時間がとれず、最低限の仕事をこなすだけで精いっぱいだ。

 トイレや入浴の介助など力仕事も多いが、男性職員はあまりいない。「家族を養えるほどの収入ではないから」と刀根さんは考える。

 日本、特に地方はこれから深刻な高齢社会へ突入する。増え続ける高齢者を支える介護現場に希望がなければ、地域の将来は暗い。「少しでも待遇が良くなれば、介護を志す人も増えると思うんですが」

<消費税増税の先送り> 野田政権時代の2012年6月、消費税を今年4月に8%、来年10月に10%へ段階的に引き上げることで民主、自民、公明の3党が合意。8%への増税は予定通り実施されたが、安倍首相は景気悪化を理由に10%増税の先送りを表明。経済情勢によって増税を止められる「景気弾力条項」を削除した上で、17年4月に引き上げるとしている。