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増税延期に候補予定者6割一致 理由には隔たり

 中日新聞社が中部九県で実施した衆院選小選挙区の立候補予定者へのアンケートでは、消費税率10%への引き上げ時期について「一年半以上延期する」との回答が、自民や民主、維新を中心に六割近くを占めた。ただ、その理由はアベノミクスへの評価を加味することで、与野党で異なった。一方、集団的自衛権の行使容認や、環太平洋連携協定(TPP)交渉への態度では、与野党の対立が鮮明に。そこには、それぞれの選挙区事情や政治信条などがにじんだ。 (衆院選「票ナビ」取材班)

■経済政策

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 消費税率の引き上げ時期をめぐり、安倍晋三首相は「税制の重大な変更を行う以上、国民に信を問う」「アベノミクスの他に選択肢はあるのか」と述べるなど、争点とする構えだ。

 消費税率への態度を問う質問で、首相が方針として示した二〇一七年四月への一年半の先送りを含む「一年半以上の延期」を選んだのは、自民の大半と民主、維新の過半数。自民は「(アベノミクスによる)景気回復を確実なものにすることが先決」(岐阜1区の前職、野田聖子氏)といった論調が多く、失速感が出てきた景気の立て直しに向け「やむを得ない延期」と強調する。

 一方の野党はアベノミクスが失敗したと指摘。民主は、自民、公明、民主が三党合意した「(消費税率引き上げ時の)議員定数削減が果たされていない」(滋賀1区の民主前職、川端達夫氏)などと身を切る改革を訴える。維新からは、民間競争の妨げとなる規制の改革を優先させるべきだとの意見も。共産、社民は全員が「増税をやめる」で一致した。

 アベノミクスに対しては地方から「中小企業や消費者への波及が不十分」(富山3区の自民前職、橘慶一郎氏)との声も上がるが、自民、次世代の全員が肯定的に評価した。他党の回答には「金融緩和とバラマキの古い政治」(三重5区の民主元職、藤田大助氏)、「二年間で生活は豊かにならなかった」(愛知1区の社民新人、平山良平氏)などの批判が並んだ。

■集団的自衛権

 集団的自衛権の行使容認では、自民の多くの予定者は「国民の生命と財産を守るため」(長野4区の前職、後藤茂之氏)、「抑止力を高めることが必要」(静岡4区の前職、望月義夫氏)などと主張。ただ、自民でも愛知10区の前職、江崎鉄磨氏は「時の政権が全てではない。まず憲法改正が先決」。憲法解釈の変更について首相と距離を置く三重1区の前職、川崎二郎氏は選択肢を空欄とした。

 民主、維新、共産、社民の全員は「海外で戦争する国づくり」「憲法違反だ」などと批判。長野1区の民主前職、篠原孝氏は「これこそ解散で信を問うべきだ」と、選挙の争点化を主張する。

■TPP

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 選挙区ごとに産業構造が異なり、利害関係が複雑なTPP交渉。農業分野などで痛みが伴う場合の対応を尋ねたところ、選挙区内に都市部が多い各県の1区と、それ以外の選挙区で違いが目立った。

 静岡1区の民主元職、牧野聖修氏は「世界にコミットする(関わる)べきだ」と合意を主張。石川3区の共産新人、渡辺裕子氏は「能登の農業は壊滅させられる」と、すぐに交渉から離脱すべきだとした。

 選択肢を空欄にした候補者は二十七人でこの多さは全質問の中で突出した。愛知7区の民主元職、山尾志桜里氏は「密室で交渉が進む不安を払拭(ふっしょく)すべきだ」と情報の少なさを批判した。

◆判断難しい政策も

 <牛山久仁彦・明治大教授(政治学)の話> 解散の理由として提示されている消費税増税の先送りについて、野党の民主、維新が自民と同様に1年半以上の延期を支持している。同じ延期支持でも自民と理由は異なり、争点になっていないわけではない。ただ、生活に密着している政策課題で本来対決する政党の主張が似通う今回の状況では、有権者は判断するのが難しい。

 TPPも同じだ。TPPで選択肢を空欄にした自民の候補者が多かったのは、合意を求める米国、経済界からの要請と自身の支持基盤との間で態度を明確にできず、悩んでいるからだろう。

 一方、集団的自衛権や原発再稼働については、与野党の主張がはっきりと分かれた。有権者は、主張の違いが明確な政策、明確ではない政策への各候補の態度を複合的に検討し、投票することが求められる。