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岐阜ニュース

<「この道」はどこへ>(4) 草の根交流は脈々と

 先月半ば、北京から飛び込んできたニュースは、安倍晋三首相のぎごちない笑顔と、習近平国家主席のこわばった表情ばかりが気になった。三年ぶりの日中首脳会談。画面から伝わる重苦しい空気が、昨年八月のほろ苦い思い出をよみがえらせる。

 「あんな物々しい雰囲気だなんて」

 岐阜日中協会の藤本芳子さん(65)はその日、岐阜市のふれあい福寿会館にいた。県と中国・江西省の友好提携二十五周年を祝う記念式典。本来なら祝賀ムードの会館周辺は警察官が取り囲み、中に入れるのは事前登録した関係者だけ。事情を知らずにやってきたらしい高齢の女性に、県職員が申し訳なさそうに帰宅を促していた。

 沖縄・尖閣諸島付近で中国船の領海侵犯のニュースが世間をにぎわせていたころ。協会が贈ったモニュメントには、嫌がらせを警戒して監視カメラのレンズが向けられていた。

 知人の誘いで、中国との交流にかかわり四半世紀。企業実習で来日した若者たちとのバス旅行や食事会を通じ、友情をはぐくんできた。雑技団を招いて一カ月ほど面倒を見たことも。「中国に会いに行くたび、皆が手を振って駆け寄ってきてくれるの。でもね…」。頬を緩め、アルバムのページをめくる手がふと止まった。

 この二年、安倍首相の言動は中国を刺激し続けた。靖国神社に参拝し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み切った。一方で、中国はかたくなに尖閣の領有権を主張し、領海侵犯を繰り返す。そんな構図に藤本さんの心は痛む。

 岐阜市で中国に進出する企業向けのコンサルティングを手掛ける郭振峰さん(51)も、同じ思いを抱いている。来日して二十七年。差し当たり仕事に支障が出ているわけではない。それでも、「いつか日本人から『ばか野郎』って、ののしられるんじゃないか」と不安に駆られる。

 昨年三月、日中の友人らと交流団体を立ち上げた。両国の大学生を互いに受け入れ、交流会を企画する。「互いを知れば『反日』も、『嫌中』もなくなる」

 外交は、きれい事ばかりではないと分かっている。けれども、人のつながりがあって、初めて国もつながる。そう信じる郭さんには、隣国同士の応酬は「意地の張り合い」に映って仕方がない。

 (宇佐美尚)

◆この2年 中国が海洋進出加速

 かつてないほど冷え込んでいるとされる日中関係。領有権をめぐっても両国間で火花を散らす。

 「海洋強国」をうたう中国は昨年11月、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に突然、戦闘機の緊急発進の基準となる防空識別圏を設定した。日本の尖閣国有化を受け、資源確保や海上ルートの安全確保が狙いとされる。

 こうした動きに、日本政府は日米同盟や東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携で対抗。安倍晋三首相は「力による現状変更の試みがある」と非難。同じく領有権をめぐり中国と衝突するフィリピン、ベトナムなどを加え、中国の「抑え込み」を図る。

 一方、中国側は昨年末の安倍首相の靖国神社参拝に触れ「(旧日本軍に殺害されたアジアの犠牲者たちの)魂にどのような姿勢を示すのか」などと、反発を強める。

 (小笠原寛明)

◆民間調査から 「良くない印象」9割

 各政党のマニフェスト(政権公約)の評価や、政策提言に取り組むNPO法人「言論NPO」(代表・工藤泰志東洋経済新報社元編集長)が7〜8月、中国英字紙と共同実施した世論調査によると、中国に対し「良くない」「どちらかといえば良くない」という印象を持つ日本人は93.0%で、2005年の調査開始以来、最悪を記録した。

 一方、日本に良くない印象を持つ中国人は過去2番目に悪い86.8%。両国とも12年以降、急増しており、同年比で日本人は13.7ポイント、中国人は22.3ポイント悪化した。

 理由について日本人は「国際的なルールと異なる行動をする」「資源やエネルギー、食料確保などの行動が自己中心的」、中国人は「魚釣島(尖閣諸島の島の一つ)を国有化し対立を引き起こした」「侵略の歴史をきちんと謝罪していない」などを挙げた。