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福井ニュース

消費増税先送りに福祉現場は思い交錯

施設 財源の確保へ不安

利用者 少しでも遅い方が

 衆院選は終盤に入り、各党、各候補とも有権者へのアピールに熱が入っている。「消費税増税延期の判断について国民に信を問う」のが衆院解散の大義名分だったはずだが、論戦が盛り上がっているとは言い難い。消費税増税の理由として社会保障の安定と充実が挙げられているが、県内の福祉現場をのぞくと「財源確保のため消費税増税を」と求める施設側と「増税すれば施設にいられなくなる」と危機感を募らせる利用者側の思いが交錯する。

 福井市堅達(げんだつ)町にある指定介護老人福祉施設「山翠苑(さんすいえん)」の田中淳施設長(42)は「国の財源がなければ福祉制度の維持は困難」と訴え、増税の必要性を強調する。「社会福祉法人は生活困窮者を守る社会のセーフティーネットとしての使命を負っている」と話し、消費税率の10%への引き上げが一年半先送りされた分の財源確保に「不安を覚える」と明かす。

 施設運営だけでいえば、食材や備品の購入などで消費税増税が重荷になる面もあるとしながら「福祉全体のことを考えると増税し、充実した制度にすることが重要」と長い目で福祉制度の維持を考えていかなければならないと説明。「公立高校で介護科を増やし、子どもたちの意識を福祉に向けさせることも必要」とも指摘し、介護に携わる人材を育成して福祉サービスの一層の充実に向けた国の対応の必要性を訴えた。

 一方、施設利用者にとっては負担増を強いられる消費税増税への反発は強い。福井市のケアハウス「アーバン・ヴィラ・ロータス」に入居する女性(85)は再増税に「先送りされたのは良かった。少しでも遅いほうがいい」と胸をなで下ろす。8%に上がった際は「遊びに出掛けることを控えたが、必要なものは買い控えもできない」と振り返り「政治家に庶民の気持ちは分からない」と嘆く。

 同じケアハウスに入る男性(77)は「10%になったら施設にいつまでいられるか不安、引き上げがちょっとでも延びて良かった」と話し「楽しみにしている居酒屋やカラオケに行くことも減らさなければならない」と寂しげな表情を浮かべた。政治については「少子高齢化も進む中、介護福祉を最優先に考えてほしい」と願う。

 交錯する思いに、政治はどう答えを出すのか。施設側も利用者側も、候補者の言葉から消費税への主張を読み取ろうとしている。

 (中場賢一)