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円安、百貨店も中国人観光客頼り 「高額品ほど売れる」

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 午前八時すぎの中部国際空港(愛知県常滑市)では、家電などを販売する免税店に中国語が飛び交う。「これは日本製か」「どこのブランドか」。出発を控えた中国人観光客は、中国人の店員と短い言葉を交わしただけで、五分ほどの間に八万円の炊飯器を三つも購入した。免税店の田中勝利支配人は「円安が進むにつれて高額品ほど売れる。中国人観光客の購買力は桁違いだ」と舌を巻く。

◆免税店

 アベノミクスがもたらした円安により、中部国際空港の免税店の売り上げは急増している。十月は十億五千万円と過去最高を更新し、十一月はさらに上回る見通し。売り上げに占める外国人の比率は、上期(四〜九月)で47%と前年同期比5ポイント増。中国人の富裕層が売り上げを支えている。

 中国人は化粧品や酒、たばこ、時計などのブランド品や家電を好む。田中支配人は「特に日本製であることを重要視する」と説明。急増する中国人に対応するため、今年四月、中国語を話せるスタッフ二人が対応する相談カウンターを免税店エリアに常設した。

 円安で訪日外国人は増え続けている。観光庁によると、二〇一四年は一〜十月で千百万人を突破。過去最高だった昨年一年間の千三十六万人をすでに上回り、千三百万人に達する見通しだ。政府は東京五輪が開かれる二〇年までに二千万人を目指している。

 名古屋市内の主要百貨店も、訪日外国人の増加の恩恵を受けている。外国人観光客向けの免税制度が十月一日から拡大され、これまでの家電製品や衣類に加え、食品や化粧品なども対象となった。国内の消費者と違って、消費税増税の影響を受けず、各店は外国人の購買力に期待する。

 十一月の売り上げ速報によると、ジェイアール名古屋高島屋では免税品の販売が件数で前年同期の三倍、金額で二・七倍に達した。名古屋三越は、外国人客の販売額が二倍になった。いずれも客層の中心は中国人。日本人の消費意欲が落ち込む中、高島屋の広報担当者は「円安が進み外国人が買い物しやすい環境が続いている」と話す。

◆逆風

 一方、日本からの海外旅行を販売する観光会社は、円安で苦戦を強いられている。JTB中部(名古屋市)によると、年末年始の海外旅行の予約者数は前年同期比4・8%減。円安で北米や欧州など長距離の旅行が落ち込んでいる。

 買い物目的が多い韓国は政治関係の悪化も加わり、約一割減。韓国への旅行者数の回復が見通しよりも遅れていることから、中部国際空港会社は十一月、一四年度の国際線の旅客数の見通しを、従来の四百七十万人から四百五十万人に二十万人下方修正した。

 自民党や公明党、民主党などは政権公約で観光振興を掲げるが、訪日外国人を増やす政策が中心。JTB中部の担当者は「訪日外国人には注目が集まっているが、円安で『海外に今行かなくてもいい』と考える日本人が多い」とぼやく。

 (石井宏樹、桐山純平)