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中部ニュース

伸びない輸出 円安恩恵広がらず

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 自動車や電機のメーカーなど輸出企業が集積する中部地区。二年前に始まった安倍政権の経済政策「アベノミクス」で円安が三〇円以上進んだが、輸出はこんな中部でも伸びていない。産業構造が変化し、電機メーカーを中心にした工場の閉鎖のほか、海外市場の拡大による自動車の現地生産化が進んだためだ。

 ◆電機

 無人の建屋に「SONY」の看板の跡がうっすら残る。昨年三月末に閉鎖した岐阜県美濃加茂市のソニー子会社工場。かつては小型ビデオカメラやテレビゲーム機「プレイステーション2」を製造し、ソニーの黄金期を支えた。閉鎖直前は一眼レフカメラの交換レンズを生産し、海外にも輸出していた。

 国内の電機メーカーは、価格などで海外勢に差をつけられ、競争力を失った。企業は拠点の合理化のため国内の工場を閉鎖。その流れは今も続き、パナソニックは電子部品をつくる松阪工場(三重県松阪市)を来年三月までに閉める。

 名古屋税関管内の今年一〜十月の電気機器の輸出額は前年同期比3・1%減の一兆八千八百六十二億円。対して輸入は17・6%増の九千六百三十億円と、円安下でも輸入の方が伸びた。大和総研の熊谷亮丸(みつまる)執行役員チーフエコノミストは「生産の海外シフトで逆輸入が増えている」と指摘する。

 ◆自動車

 「今のところはまだ横ばい圏内の動き」「かつてのような大幅な増加は期待しにくい」。大胆な金融緩和を仕掛けた日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は十一月の名古屋市内の会見で、構造的に生産の海外移転が進んだとして、円安でも輸出が増えていない実情を素直に認めた。

 こうした輸出の伸び悩みは、中部の主要産業の自動車にも強く表れている。トヨタ自動車の一〜十月の輸出台数は、7・2%減の百四十八万台。「売れる場所でつくる」(小平信因(のぶより)副社長)方針で、カローラなど海外への生産移管が進んだことが大きい。

 自動車や鋼材などの輸出を手掛ける伊勢湾海運(名古屋市)の後藤正三社長は「トヨタも輸出が増えているわけではない。国内産業の空洞化が解消しない限り、円安になってもメリットはない」。自動車メーカーの後を追ってメキシコに現地法人をつくるなど、荷主の海外シフトへの対応を余儀なくされている。

 ◆中小企業

 輸出の低迷は国内生産の足を引っ張り、国内に残った多くの中小企業は仕事が減る。大和総研の試算では、安倍政権発足後の円安で、企業の経常利益は約三兆円押し上げられた。そのうち、輸出数量は増えなくても為替差益のメリットを得やすい大企業が二兆五千億円と大部分を占め、数の多い中小企業は全体でも五千億円にすぎない。

 中京大経済研究所の内田俊宏研究員は「円安にもかかわらず輸出が増えなければ、国内にしか生産拠点を持たない中小企業は一層厳しくなる」と話している。

 (平井良信)