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中部ニュース

鈍る消費、タクシー直撃 燃料高や人手不足も深刻

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 衆院が解散した二十一日の金曜日、名古屋最大の繁華街「錦三(きんさん)」周辺の道路では、終電を過ぎると数十台の空車タクシーが列をなしていた。男性運転手(54)は「金曜日でも終電後は客足がぴたりと止まる。夏すぎから落ち込み、リーマン・ショック直後に後戻りしたようだ」とため息をこぼした。

 二年前の安倍政権発足後、超円高が是正され景況感が上がって客足は一時的に戻ったが、タクシー業界は円安による燃料高と人手不足に苦しんできた。今年四月の消費税増税が苦境に追い打ちをかけ、アベノミクスの恩恵を受けられなかった業界の代表格だ。

 中部運輸局によると、名古屋地区のタクシー会社約二十社の輸送人員は、昨年四〜六月からプラスが続いたが、消費税増税後はマイナスに転じた。特に六月以降の落ち込みは大きく、4%以上の減少が続き、浮上の兆しは見えない。

 家計の消費が鈍るとタクシーは真っ先に節約の対象になりやすい。中部地方には円安効果で潤う輸出企業が多いが、堅実な姿勢は変わらない。岐阜県羽島市の岩田鉄工所の岩田勝美社長(62)は「従業員に経費節減の必要性を示す意味でも、タクシーは容易に利用できない。経済全体が好転しないと企業が使える環境にはならない」と話す。

 名古屋タクシー協会会長で、タクシー大手「つばめ自動車」(名古屋市)の天野清美社長は「名古屋地区のタクシー会社の六割以上が赤字の状態だ」と厳しい現状を語る。消費税の再増税延期について、天野社長は「わずかながらも問題解決の時間ができた」と胸をなで下ろすが、二〇一七年四月に予定される再増税に向け課題は山積している。

 七年前の料金改定時には燃料のLPガスは一リットル=六十八円だったが、最近は約八十八円まで約三割上昇した。原油価格が下がっても、円安がそれを打ち消してしまう。燃料費の高騰は利益を圧迫する最大の要因となっている。

 さらに深刻なのは、需要の取りこぼしにつながる人手不足だ。免許が必要な上、工場などと比べて長時間で低賃金とみられがちなタクシー業界に人は流れてこない。運転手の高齢化も進み、登録はしているが動いていない車が二割もある。名古屋地区で現在、約八千人の運転手がいるが「すべての車両を動かすには二千五百人ほど足りない」(天野社長)状態だ。

 十二月の稼ぎ時に人の動きが鈍くなる選挙は本来、歓迎できない。それでも、天野社長は「タクシーは高齢者雇用の受け皿にもなる。運転手に必要な第二種運転免許取得の年齢制限緩和や、取得費用の補助などを国に求めていきたい」と選挙後に期待を込める。

 (石井宏樹)