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中部ニュース

円安が名古屋メシ直撃 原料高騰が響く

 衆院が解散され、十二月十四日に投開票の衆院選では、安倍晋三首相が進めてきた経済政策「アベノミクス」の評価が最大の争点となる。円安で輸出企業が利益を得て、株高が富裕層を潤す一方、原材料の輸入価格上昇にあえぐ中小企業からは「大企業寄り」と不満の声も漏れる。中部地方の生産、消費の現場で景気の実感を聞くとともに、識者の意見なども織り交ぜながらアベノミクスの功罪を浮き彫りにしていく。

 日に日に寒さが増し、名古屋メシの一つ、みそ煮込みうどんの季節がやってきた。だが、来年で創業九十年を迎える名古屋・栄の老舗、山本屋総本家の小松原克典・代表社員は浮かない表情だ。「回復の兆しがなかなか見えてこない」

 四月の消費税増税に合わせて価格を改定し、一番安いメニューの「普通煮込うどん」の値段は千四円と、千円を超えた。消費者は節約志向を強め、月次の売り上げは前年比4〜5%減と、厳しい状態が続く。

 さらに経営に追い打ちをかけたのが、うどんの原料となる小麦価格の高騰だ。アベノミクスの第一の矢に当たる日銀の金融緩和で、二〇一三年四月に一ドル=九二円をつけた為替相場は、今月十九日に一時、一一八円台まで円安が進んだ。

 山本屋は国産小麦を使うが、人ごとではない。小麦は海外からの輸入が九割と圧倒的で、国産品の値段も輸入品の値動きに左右され、今は上昇している。

 安倍首相は衆院解散後に行った二十一日の会見で「円安でガソリンや原材料が上がり困っている。経済対策で対応する」としながらも、「アベノミクスが始まって、行き過ぎた円高が是正された」と語り、輸出企業に恩恵が出やすい円安政策の正当性を強調した。

 小松原さんは「(経済政策が)製造業にかたよっていた。国内の客を相手に商売をしている企業にもっと目を向けてほしい」と注文する。今のところ「お客さんがますます減ってしまう」と、春に続く再値上げは考えていない。「今は我慢のとき」と悩む日々だ。

 円安による原材料価格の上昇が経営を圧迫するのは飲食業界に共通する構図だ。

 「コメダ珈琲店」を展開するコメダ(名古屋市)も、パンの原料の小麦だけでなく、コーヒーやバター、卵といった名古屋モーニングに欠かせない食材が軒並み高騰。値上げを避けるため、仕入れ先と交渉を重ね、なんとかやりくりしている。「消費税率10%への引き上げはいったん延期となったけど、一七年四月には確実に増税される」と、コメダの担当者は身構える。

 パスタや冷凍食品、アイスクリームなど、身近な食品の値上げも相次ぐ。名古屋市内のスーパーの男性店長は「お客さんもニュースで円安になったことは知っているのに、『どうしてこんなに高いの?』と苦情がやまない」と打ち明ける。

 輸入する飼料が値上がりしたあおりで、卵の特売をやめるライバル店も出始めた。それでも店長は「行列ができる九十五円の特売だけは続けたい」。利益を削ってでも集客を保つしかない。

 増税と円安のダブルパンチで、窮屈な生活を強いられるのは消費者も同じだ。このスーパーに毎日、買い物に来ていた主婦(71)は言う。「今は特売日を狙って週二回しか行かない。私たちも賢くならなければ…」 (桐山純平)

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