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沖縄の声を直接届ける 大学生が基地問題訴え日本一周

 在日米軍基地の約74%が集中する沖縄県の現状を伝えるため、那覇市の大学生知念優幸(まさゆき)さん(23)が、各地で講演をしながら日本一周の旅を続けている。基地問題は県民の暮らしに影を落とす一方、衆院選では議論が盛り上がらないまま。知念さんは「日本の『平和』の犠牲になっている沖縄に目を向けて」と訴えている。

 フェンス越しに見える古びた石造りの建物。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の敷地内にたたずむ沖縄独自の「門中(むんちゅう)墓」だ。

 「先祖代々の墓がある土地も米軍に奪われている。沖縄には、自分たちのお墓を拝むこともできない人々がいるんです」

 衆院選公示から二日後の四日、神戸市内の教会。知念さんはこの旅で百三十二回目となる講演会で、写真を示しながら基地と隣り合わせの日常を語った。米軍機の騒音や墜落、米兵による性犯罪やひき逃げ。「僕らは生まれた時から近くに基地がある。事件、事故が起きても『またか』と思ってしまう」と打ち明けた。

 知念さんは地元の沖縄キリスト教学院大に入学してすぐ、友人と地元の歴史文化を学ぶグループを立ち上げた。「学校で教えられる全国一律の日本史でなく、琉球独自の歴史を知りたかった」。修学旅行や研修で沖縄に来る中高生、大学生向けのガイドも担ったが、米軍基地に囲まれるような県民の生活を伝えると、「知らなかった」という反応がほとんど。「本土に問題を知ってもらうには、直接会って話すしかない」。四年生に上がる直前の今年二月に休学し、軽乗用車に乗って全国行脚を始めた。

 沖縄から船で鹿児島に上陸。九州から中国、関西を通り、北陸や東北を経て夏には北海道に到着した。その後は太平洋側を南下し、十一月には名古屋市内でも五カ所で講演。今は再び中国地方を旅している。母校の紹介で各地の教会で講演を重ね、高校や大学でも沖縄の歴史と現在を伝えている。

 「沖縄を犠牲にしている今の日本が、本当に『平和』と言えるのか」と問いかける知念さん。いま気がかりなのは、衆院選で基地問題がほとんど議論になっていないことだ。

 普天間飛行場の名護市辺野古(へのこ)への移設は、住民の反対をよそに沿岸部埋め立てに向けた調査が進む。十一月の知事選は移設反対派の翁長雄志(おながたけし)氏が圧勝したが、政府は「粛々と進める」と姿勢を崩さず、衆院選でも目立った争点になっていない。

 知念さんは「これだけ民意が無視され続けてきたからといって、『今さら何を言っても無駄』とあきらめてはいけない。全国の有権者には沖縄の現状を知った上で、投票に行って意思を示してほしい」と呼びかけている。

 (社会部・佐藤航)