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初の衆院選で念願の一票 被後見人ら選挙権回復

 成年後見人が付いた認知症患者や知的障害者の選挙権が回復して初の衆院選を迎える。投票できる喜びをかみしめる人がいる一方、依然として寝たきりや重い認知症で投票所に足を運ぶのが困難な人も。支援団体は「権利回復は大きな一歩だが、今後も投票の意思がある人への支援が必要だ」と訴える。

 「緊張したけれど、投票できてほっとした」。愛知県津島市の障がい者センター「あいさんハウス」に入居する森嶋幸代さん(40)は十一日、市役所で期日前投票を済ませると笑顔を浮かべた。

 森嶋さんは知的障害があり、四年前に後見人が付いた。成年後見制度は判断能力が不十分な成人の財産管理や契約を支援するため二〇〇〇年に導入されたが、後見人を付けた人は選挙権を失った。森嶋さんと同じ知的障害のある女性らが提訴。東京地裁が「選挙権の制限は許されない」と違憲判決を出し、昨年五月の公職選挙法改正で十三年ぶりに投票権が戻った。

 これまで選挙に行ったことがない森嶋さんだが、今回は施設が用意したバスで入居者五人と投票所へ。事前に新聞記事を読み、福祉政策に熱心そうな候補の名を投票用紙に書き込んだ。「選挙が身近になった気がした。また投票に行きたい」と話す。

 ただ、全国の司法書士でつくる支援団体「成年後見センター・リーガルサポート」(東京)の全国調査によると、投票権が回復してから初の国政選挙となった昨年七月の参院選で、投票動向を確認できた被後見人の投票率は7・6%にとどまった。自宅から投票所へ行く交通手段がない場合、タクシー代などが生活費を圧迫する問題があり、リーガルサポート愛知支部は「今回の衆院選でも状況は大きく改善されていない」と指摘する。

 支援団体「成年後見制度選挙権を考える会」も今月二日、総務省に要望書を提出。「投票所の受付に『補助希望』のカードの掲示を」「候補者をタッチパネルで選べるとよい」と求めている。

 また、投票するのが困難な重い障害や認知症の人もいる。名古屋市西区の特別養護老人ホーム「平田豊生苑」では、投票所に行けない入居者のため施設内で不在者投票が行われているが、認知症状が進んだ人は政党や候補者の漢字が読めなかったり、投票用紙に自分の名前を書いてしまったりする人がいた。

 衆院選の公約では、大半の党が障害者支援を掲げるが、投票時の不便解消に言及した党はない。リーガルサポート愛知支部の野田隆誠副支部長は「障害や認知症の程度で対応は違ってくるが、投票の意思がありながら移動が難しい人には行政のサポートや在宅での投票などを検討するべきだ」と求めている。

 (社会部・浅井俊典、並木智子)