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望むのは復興だけ 岩手・大槌

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 衆院選は各陣営とも終盤の追い込みに入っているが、十一日で発生から三年九カ月となった東日本大震災の被災地からは、復興対策が大きな争点になっていないとして「選挙より復興を」との切実な声が聞こえてくる。十四日の投開票を前に、その一つ、津波で大きな被害を受けた岩手県大槌町を歩いた。

 ひっきりなしにダンプカーが行き交い、運んできた土をショベルカーが数メートルの高さに積み上げていく。津波で壊滅したかつての中心市街地では、土地のかさ上げ工事が進む。土煙が舞う中、一台の選挙カーが通り過ぎたが、訴えは重機の音でかき消され、近くの高台にある仮設住宅にはほとんど届かなかった。

 町では、死者・行方不明者が人口の一割、千二百八十四人に上った。町民の三分の一は今も仮設住宅で暮らす。津波で家が流された越田ミサさん(77)もその一人。この三年半、八十歳を超えた夫と二人、四畳半二部屋に住んでいる。

 もともと仮設住宅は長期使用を想定してつくられていない。最近は、床が腐ったり、かびが生えたりするので、朝夕、窓をタオルで入念に拭き、湿気を取らなければならない。住宅再建のための支援制度はどうなるのか、医療機関が津波で流されたため、隣の市まで通院している夫への医療費助成は−と不安は次々に湧いてくる。

 大槌町を含む岩手3区は、自民、民主の二人の前職と共産新人の計三人が争う。自民前職は、インフラ復旧が進む実績をアピールし、自身も津波で家族を失った民主前職は、与野党の枠を超えた復興課題の解決を訴える。共産新人は、復興施策が十分ではないと安倍政権を批判する。

 これに対し、越田さんは「各党とも復興を重視するとは言っているが、私たちの生活をどうするかが一番聞きたいんです」。だが、人口の少ない大槌町に選挙カーが回ってくるのはまれ。十一日も、二候補の選挙カーが通ったが、名前の連呼がほとんど。「できれば直接訴えたいんだけど…」という思いは届かない。

 仮設住宅暮らしの長期化は、被災地共通の課題といえる。岩手、宮城、福島の東北三県では、今年十月時点で八万七千五百七十八人が仮設住宅に住む。最も多かった二〇一二年四月から四分の一しか減っていない計算だ。道路などのインフラ整備は計画の九割以上進んでいるが、復興住宅の建設は14%にとどまる。

 大槌町では、前回選挙から復興の実感が持てない人も多く、仮設住宅で暮らす七十代の建設作業員の男性は「アベノミクスと言われても、ここでは何も分からない。本当に仕事ができてくるのはまだ何年も先のことだし」と話す。

 「何もこんな寒い時期に選挙なんてしなくても」と話すのは同町の仮設商店街でそば店を営む高橋勝子さん(70)。「選挙がどんな結果になっても、私らの願いは、ただただ早い復興への後押しをしてもらいたいだけだよ」と語った。

 (社会部・中尾吟)