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<おさらい 3つの論点>(3) 原発再稼働

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 「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」を公約に掲げ、前回の一二年衆院選で政権復帰を果たした自民党。ところが、安倍首相は翌一三年七月、原子力規制委員会の下で新たな安全指針の新規制基準が施行されると「基準に適合した原発は順次、運転させる」と発言し、原発再稼働に前のめりな姿勢に転じた。

 今年四月に閣議決定したエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード(基幹)電源」と明記。成長戦略の一環として次世代原子炉の開発、導入や原発の海外輸出も推進するなど原発回帰を鮮明にし、福島第一原発事故後、民主党政権の脱原発路線を事実上撤回した。

 原発回帰で勢いづくのは電力業界。電力各社が再稼働に向け規制委に審査を申請した原発は既に大飯原発3、4号機(福井県)、浜岡原発4号機(静岡県)など二十基に達した。国内四十八基ある原発のほぼ四割で、このうち審査に合格した川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)は県などの地元同意を得ており、早ければ来年二月にも再稼働する見通しだ。

 政権の再稼働路線は九月に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が中断された問題にも行きつく。太陽光や地熱発電などの普及を目指して民主政権時代にスタートした制度は購入価格が高く、電力会社にはもともと不評だった。原発再稼働が現実味を増したことで、購入意欲が薄れ、制度が行き詰まった。

 立命館大の安斎育郎名誉教授(原子力工学)は「原発を取り巻く科学的な問題はこの二年間、何も変わっていない。変わったのは政治の都合だ」と指摘。原発再稼働は、成長戦略を旗印に財界寄りの姿勢を強める政策の一環とみる。

 ただ、再稼働には国民の抵抗感は依然として根強い。このため、政権は運転開始から四十年を超える古い原発の廃炉を進める方針で、経済産業省は電力会社が廃炉を円滑に進められるよう廃炉の損失を一括計上しなくても済む仕組みの検討に入っている。原発を選別することで安全性をアピールし、再稼働への抵抗感を薄める狙いがある。

 一方、建設中の大間原発(青森県)や設備がほぼ完成している島根原発3号機(島根県)の運転は容認する考えを示しており、今後の新増設も認める可能性が出ている。

◆「核のごみ」や地元手続き 課題先送りのまま

 原発回帰を鮮明にする安倍政権だが、課題は依然として先送りされたままだ。

 最大の問題は「核のごみ」だ。原発から出る放射線量の高い使用済み核燃料は一万七千トン以上ある。各原発の核燃料プールや青森県六ケ所村の再処理工場で一時保管されているが、貯蔵能力は限界に近づきつつある。

 ところが、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル事業は失敗続きでいまだ技術が確立できていない。高レベルの放射性廃棄物を長期間厳重管理する最終処分地は場所すら決まらず、この状況で原発を順次再稼働させれば、行き場のない核のごみをさらに増やし、将来につけを回すことになりかねない。

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 自民党は今回の衆院選でも「原発依存度は可能な限り低減」を公約に掲げた。が、安倍政権は福島第一原発事故前に電源構成の三割を占めていた原発をどの程度引き下げるかについていまだ具体的な数値目標を明かしていない。数値を示せば、世論の反発を招くとの懸念からだが、将来の電源比率がはっきりしないと、太陽光をどれだけ増やすかなど再生エネの普及にも支障をきたす。

 原発の運転をめぐる地元手続きも課題。政権は川内原発再稼働の地元同意を鹿児島県と立地する薩摩川内市に限定した。地元の範囲が広がれば、それだけ手続きや住民の説得に時間がかかるためだが、原発事故が起きれば被害が広範囲に及ぶことは福島第一原発事故で証明されている。

 近隣の自治体や住民の間には「リスクだけ背負わされる」との不満が強く、少なくとも国が防災計画の策定を義務づける原発から半径三十キロ圏を地元同意の範囲にすべきだとの意見が出ている。