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<おさらい 3つの論点>(2) 集団的自衛権

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◆憲法9条、解釈を変更

 安倍政権は七月、同盟関係にある米国を念頭に、武力で他国を守る集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。集団的自衛権の行使は歴代政権が憲法九条の許す範囲を超えるとして禁じてきたが、安倍政権は解釈を変更。他国の戦争に参加する道を開き、平和憲法の理念を大きく変質させた。

 閣議決定で、武力行使が認められる新たな三要件について「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合などと明記。日本が攻撃されていなくても「密接な関係にある他国」が攻撃された場合に武力行使が認められるとした。

 自衛隊による他国軍への後方支援の活動範囲についても「現に戦闘行為を行っている現場ではない場所」に拡大。現在は許されていない武器や弾薬の提供も視野に入れている。武力攻撃と直ちに認定できない、領海侵入などの「グレーゾーン事態」では、自衛隊の出動手続きを迅速化するとした。

 閣議決定を受け、安倍政権は当初、秋の臨時国会で関連法案の提出を予定していた。しかし、来年四月の統一地方選後に先送りした。国民の反発が強く、選挙への影響を回避するためとみられている。本来、国民の信を問うべき安全保障政策の大転換にもかかわらず、首相は自ら仕掛けた今回の衆院選で具体案をほとんど示さず、争点化を避けた。

 こうした首相の政治手法は、閣議決定に至る過程でも同じだった。改憲に意欲を示す首相は就任直後、改憲手続きを緩和する九六条の見直しに意欲を示したが、国民の反対意見が多く、その主張を引っ込めた。その後、改憲しなくても政府の解釈で集団的自衛権の行使は認められるとの姿勢に転じていった。

◆具体像示さず争点隠し 法政大教授・杉田敦氏

 閣議決定された集団的自衛権の行使容認は関連法制が整備されないと具体像が見えない。安倍政権はそれを示さずに衆院を解散し、国民に信を問おうとしている。

 当初、憲法九六条の見直しを目指した首相は民意を聞く重要性を強調していた。ところが、今回の衆院選を「アベノミクスが問われる選挙だ」と言い、集団的自衛権の行使容認や原発再稼働など国民に不人気な政策を避けている。恣意(しい)的な争点隠しだ。

 選挙で選ばれた政治家の意見が民意だとする風潮が強まっているが、幅広い民意を反映するのが民主的な政治。選挙で民意をすべて聞いたと済ますのは間違いだ。とはいえ、安全保障政策の中身を示していなくても、選挙で勝てば「有権者の信任を得た」と政策を推し進めることになる。強引な政治手法の是非が問われている。

◆行使必要なら改憲を 元内閣法制局長官・阪田雅裕氏

 集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定では、「密接な関係にある他国」が攻撃を受けた場合に、自衛隊が武力行使できるとされている。だが、それはあくまで「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合などに限られる。

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 考えられるのは、朝鮮半島有事など、韓国など周辺の国が攻められたケースだけだ。公海上の米艦船への攻撃や中東での有事で、日本の存立が危うくなったり、国民の権利が根底から覆されたりすることはあり得ない。もし、安倍政権がこれらの事態も武力行使の対象にするなら、政府の判断でいつでも集団的自衛権が行使できることになる。

 それでは憲法九条は、なくても同じ。「法治国家をやめる」と宣言するようなものだ。集団的自衛権の行使が必要なら、憲法解釈の変更でなく、改憲を訴えるのが政治の王道だ。