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愛知ニュース

「攻めの農業」現場冷ややか 設備投資が足かせ

 政府がまとめた「農林水産業・地域の活力創造プラン」を受け、全国で農地の集約が進んでいる。農業の担い手を小規模な農家から法人などに移すことで、国際的な競争力を高める狙いだ。愛知県みよし市では、農地登録制度を活用して農事組合法人が生産を広げているが、農機などへの多額な設備投資や栽培効率の悪さが足かせになっている。

 あぜを踏むと、赤褐色の表土が崩れ、小石が顔を出す。「やせた土地だから、もともと栽培でハンディがある」。農事組合法人「ファームズ三好(みよし)」の代表理事、久野文彦さん(61)は首を横に振って続けた。「政府が言う農業従事者の所得アップは、簡単ではない」

 ファームズ三好の本部はトヨタ自動車の明知工場近く。産業構造の変化や農家の高齢化で増え続ける遊休農地を活用しようと、市や農協の後押しで二〇〇五年に設立された。

 働くのは脱サラの若者など十一人。政府による農業の成長戦略で主役と想定される人材だ。耕作する水田は百二十ヘクタール。肥料代などの経費を差し引くと、コメの販売で十アール(〇・一ヘクタール)当たり二万円の利益が出る。

 ただ、トラクターなどの農機の価格は、一台数百万円に上り、購入費の返済が重荷になる。丘陵地のため、水田一枚当たりの面積は狭く、栽培効率が悪い。

 一方、政府は「攻めの農業」「農村の活力創造」を掲げて突き進んでいる。昨年十二月には、安倍晋三首相を本部長とする「農林水産業・地域の活力創造本部」が目標を発表した。

 生産から加工、販売を一体的に展開する「六次産業」化による市場規模を、現在の一兆円から二〇年までに十倍にする。農林水産物・食品の輸出額を現在の五千五百億円から二〇年には一兆円にする。

 このうちコメ(加工品含む)は百五十億円から六百億円まで伸ばす。国内ではコメの消費は落ち込んでいるが、元農林水産省官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁さん(59)は「成長著しいアジアへのコメの輸出こそが、日本の農業の進むべき方向」と主張する。

 コメ輸出を五、六年で四倍にする野心的な政府目標に、久野さんは「机上の議論を押しつけるのでなく、現場を見てほしい」と冷ややかだ。ファームズ三好では設立当初、栽培をコメに限定していたが、収益は上がらず、単価の高い野菜を生産することで経営が軌道に乗った。

 みよし市では昨年四月から、市民が管理できなくなった農地を登録してもらい、大規模農家や法人に耕してもらう「農地バンク制度」も始まっている。十二月一日現在、計五ヘクタールが集まっているが、田んぼが住宅の隣で農薬が使いづらかったり、土地が狭すぎたりといった理由で、貸し出し実績は〇・八ヘクタールにとどまっている。

 (小柳悠志)