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愛知ニュース

街頭演説どこに力点

 衆院選も終盤に入り、候補者の訴えはますます熱を帯びる。愛知9区と10区で立候補した計七人を取り上げ、演説の内容を記者が分析した。限られた時間の中で、候補者はどんな主張に力点を置いたのか。比較すると、候補者の政治姿勢が浮かび上がった。

 =上から届け出順

【9区】

◆経済、地域…満遍なく 長坂康正さん(57)自前

 午後二時から愛西市の集会所で演説。十二分のうち、最初に経済政策の成果と地域の現状に一分半を割いた。「環太平洋連携協定(TPP)と農業保護」への言及も含め、経済に最も時間を使った。

 「合併した自治体が優遇される政策を」との主張が二分弱。旧町村名を具体的に挙げ、会場の地域に合わせた話題を取り上げた。

 聴衆に高齢者が多く、年金についても触れた。それぞれの主張に「現場の声を届けるのが役目」と添えた。

◆社会保障に一点集中 岡本充功さん(43)民元

 集合住宅も近い蟹江町内のスーパー前で、午後二時半すぎから十五分ほど演説。社会保障改革の話にほとんどの時間を費やし、「社会保障改革なくして、景気回復なし」と指摘した。

 「社会保障の一丁目一番地」として、最初に取り上げたのが子育て支援。次いで介護、年金、雇用制度改革と続き、幅広い世代を対象に呼び掛けた。税金の無駄遣い削減にも触れ「国会に厳しいチェックの目を取り戻したい」と話した。

◆節々で「若者」を意識 渡辺裕さん(34)共新

 午後七時から津島市生涯学習センターで演説。八分のうち、四分の一以上を消費税増税への反対に費やした。

 その中で、非正規雇用やブラック企業といった若者の雇用の問題も指摘。同年代を意識してか、全体を通して「若者」という言葉を多用した。

 残りのテーマは、集団的自衛権の行使容認に対する反対と原発の廃止の二つ。「過半数の声を無視して暴走する安倍政権に、何としてもストップをかける」と批判した。

◆記者の分析

 話題の種類が一番豊富なのは長坂さんで、地域の実情や年齢層によって細かい内容を変えている。地名などの固有名詞が多く出てくるのでイメージが湧きやすい。対する岡本さんは自分の専門分野に絞り、世代ごとに話を展開していく手法。単一の話題を論理的に詳しく説明しようとするが、どれも日常生活に関連するので理解しやすい。渡辺さんは背伸びしすぎず、「等身大」ということを意識しているようで共感が持てた。

【10区】

◆改憲、消費増税に反対 板倉正文さん(56)共新

 午前十一時半、江南市の県営住宅前で十五分間演説。主張の柱となったのは、憲法改正と消費税増税へのそれぞれの反対だった。

 集団的自衛権行使は与党内にも反対論者がいると指摘、「戦争する国づくりではなく、暮らしを守る政治が必要」と主張。消費税増税の代わりに法人税率の引き上げで財源が確保できると訴えた。

 医療制度改革と原発再稼働にも触れる一方、地域振興など地元の課題への言及はなかった。

◆企業誘致で地方創生 江崎鉄磨さん(71)自前

 夜、一宮市内で個人演説会。十二分間の演説で最も力を込めたのは「地方創生」だった。

 一宮市の整ったインフラを生かして企業誘致に努めると強調。江崎家二代にわたる支援に感謝しつつ、「10区が元気になるように頑張り抜くことが、最後のご奉公で今までの恩返し」と述べた。

 党の推進する原発再稼働とカジノ合法化に疑問を呈す場面も。消費増税に伴う軽減税率の必要性に言及し「比例は公明党に」との訴えも欠かさなかった。

◆しがらみのない政治 杉本和巳さん(54)無前

 夜、尾張一宮駅前で一時間の演説。最も長く時間をかけたのは「無所属の立場でしがらみのない政治を目指す」という訴えだった。

 巨大政党の既得権益を批判し、「消費税増税の前に、まずは身を切る改革が必要」と力を込めた。

 七十代の自民前職と民主新人を意識して「世代交代」の必要性にも言及。これまで繰り返し強調してきた「増税延期には景気条項が不可欠」という主張は、この日は控えめだった。

◆体験交え平和を訴え 小林弘子さん(75)民新

 午前八時、地元の江南市の江南駅前で演説。マイクを握った時間は三分ほどで、大半を経験に根ざした平和への訴えに費やした。

 「高齢の分、日本の歴史を知っている」と、自身が幼いころに東京大空襲に遭ったことを説明。「国が勝手な憲法解釈をする中、過去をしっかりと伝えていける候補者は私だけ」と強調した。

 「まだまだ健康で元気」と年齢の不安を打ち消す一方、経済などの具体的な政策の訴えは控えめだった。

◆記者の分析

 板倉さんは、護憲や消費税増税反対などの党の主張が柱。現政権の批判をしつつ、丁寧な説明を続ける。

 党の公約よりも自身の主張に時間を割くのが江崎さん。過去の実績を交えるのがベテラン議員らしい。

 杉本さんは独自色が強い。「しがらみのなさ」や「若さ」という他の候補にない強みを前面に打ち出す。

 小林さんは、政策よりも年齢や戦争体験の紹介が中心。知名度向上を最優先にしているのが分かる。

 (衆院選取材班)