中日新聞プラス
中日新聞 chunichi web
文字サイズ
滋賀

<課題の現場から>(5) 道州制

御在所山頂にある記念碑。最上部は滋賀県の「S」を斜めにして三重県の「M」と重ね合わせている。強い結びつきの象徴ともされる=東近江市と三重県菰野町境で

写真

 東近江市と三重県菰野町にまたがる御在所岳。この時期、赤トンボが乱舞する山頂に、アルファベットのSとMを重ねて山の形をイメージした記念碑がある。一九六八年、鈴鹿国定公園に指定されたことを祝って滋賀、三重両県知事が建てた。

 SとMは両県の頭文字。「鈴鹿マウンテン」の頭文字でもある。三重県側のふもとに乗り場がある御在所ロープウエイ広報の森豊さんは「昔から二県は強い結び付きがあった。ふもとの湯の山温泉にも滋賀県から多数お越しいただく」と話す。

 甲賀市はもっと縁が具体的だ。今年五月、隣接する三重県伊賀市、亀山市と鳥獣害対策や観光、公共交通など広域連携を探る「いこか連携プロジェクト」が発足した。「いこか」は各市の頭文字だ。

 だが府県を合併する道州制が導入された場合、これだけ親しくしている二県も別々の州になり、全く違う制度が敷かれる可能性がある。地方制度調査会は二〇〇六年、提示した三つの区割り案で滋賀県を関西、三重県を東海などに分けている。

写真

 この道州制を推進する基本法案が、与党の自民公明両党から提出されようとしていたことは、あまり知られていない。地方からの反対に配慮し、参院選後に先送りされている。

 基本法案によると、道州制では全国を十程度の道州に分割。都道府県は廃止する。国は外交や防衛、通貨などの仕事に限り、ほかは道州と市町村が担う。区割りが先に来ると議論が進まないとして、有識者でつくる「国民会議」で後で話し合って決めるとされる。

 推進派の主張は主に(1)中央集権体制で東京が肥大化しすぎた(2)現在の都道府県区分は馬や徒歩が移動の中心だった一八九〇年以来で高速交通時代に合わない(3)国の借金解消のため徹底した二重行政の排除が必要−など。

 慎重派は(1)国民は府県になじみがある(2)州都となる大都市に一極集中し格差が広がる(3)広域連合などで対応できる−などを訴える。

 地方自治に詳しい愛知大の野田遊准教授は「基礎自治体(市町村)に多くの税源、権限を持たせた方が住民の監視が届く。権限移譲するべきだ。ただ、広域の仕事を任せるには府県では狭くなりすぎ、無駄が生じている」と道州制推進を説く。

 一方、人口増加の滋賀県にありながら人口減少の悩みを抱える高島市の職員は「高島市が県のへき地であるのと同じ状況に滋賀県がなるのでは」と道州制による大阪や京都への一極集中を懸念する。

 各党の公約を見ると、みんなの党と日本維新の会、公明は道州制推進を掲げ、実現の期限も触れる。自民は党内に反対勢力もいるが前向き。民主は地方への権限や税源移譲は掲げるが道州制への明言はない。共産や社民は反対している。ただ、ほとんど争点になっていない現実がある。

 嘉田由紀子知事は「琵琶湖の環境政策など本当に基礎自治体や道州にできるのか。河川や道路の維持管理も現状は多くを都道府県がやっている」と指摘しつつ、強くくぎを刺す。

 「推進を言うならば、もっと議論の材料を示すべきだ。議会同意などの手続きが必要だった市町村合併と違い、法律一行で府県をなくせてしまう。議論なく、国民が知らないうちに法律が通ることはあってはならない」

(井上靖史)