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<課題の現場から>(3) いじめ

参院本会議で「いじめ防止対策推進法」が成立し、傍聴席でハンカチで口元を押さえる男子生徒の父親=参議院本会議場で

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 六月二十一日、国会議事堂の参議院本会議場傍聴席。同級生からいじめを受け続けた後、一昨年十月に自殺した大津市立中学二年男子生徒=当時(13)=の父親(48)は、いじめ防止対策推進法の採決の時を待った。法の成立を受け「日本の学校はあの時から変わったと実感できるまで、この法律の行方を見守り続けたい」と話した。

 息子が自宅マンションから飛び降りた直後、学校側は「遺族が『そっとしておいてほしい』と言っているから」と、家族の思いを都合よく解釈し、踏み込んだ調査をしなかった。その後、学校はいじめについて全校アンケートを実施し、その結果を受け取ったが、それを外部に出さない確約書も書かされた。市教委はその一カ月後に調査打ち切りを宣言。息子が何を悩んでいたのかを知るために、裁判という手段に訴えざるを得なくなった。

 父親は一連の対応について怒りつつも「大津市はまだましな方」と話す。いじめ被害者の遺族同士の交流を通じて、保護者への調査結果開示を市議会決議で拒んだり、調査委のメンバーを、調査される側である教委が決めた上、どんな人が委員かを遺族に公表しなかったケースがあることを知った。行政や学校がいじめ問題に本気で対応していないと痛感した。

 体罰や校内事故も学校側が表に出さない事例があり「遺族への情報公開と第三者調査委員会の設置を法制化させるべきだ」と息子の死後、繰り返し訴えてきた。

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 父親らの要望を受け各党がいじめ対策推進法案を作り、一本化。条文の中に盛り込まれない付帯決議となった部分もあるが、父親の希望に近い形で法案は成立した。「参院選が終わったら、国は聞く耳を持ってくれなくなるかもしれない」との危機感が父親を最後まで突き動かした。

 参院選に向けて父親は「『法律ができたらそれで終わり』というのは絶対にやめてほしい」と強調する。対策法成立後に表面化した奈良県橿原市の公立中学でのいじめ問題では、第三者委を市側が内部で人選。「遺族の意向を踏まえていない」との批判に「対策推進法に明記されていない」とはねつけた。

 問題が山積する教育現場。大津市教委の担当者は「対教師暴力、喫煙、器物損壊など学内での問題は後を絶たない。現場で困っているのはいじめだけではない」と疲れた顔を見せる。現場の切実な叫びに、各党はそれぞれ対策を掲げる。

 自民は推進法に基づくいじめ対策の体制づくりや教育行政の責任明確化を公約。自民と同じく対策推進法を柱に据える民主は、「体罰等防止法」の制定も目指す。共産は三十五人学級の徹底、教員の多忙さを改善することに解決策を見いだす。

 「息子が命がけでつくった法律」としゃくり上げながら語った父親。「状況によっては法律の作り替えも考えながら運用してもらいたい」と、立法府にもいじめに目を光らせ続けるよう注文する。