中日新聞プラス
中日新聞 chunichi web
文字サイズ
滋賀

<課題の現場から>(1) 原発再稼働

市役所朽木支所前の駐車場に設置された空間放射線量を測るモニタリングポスト。測定値を知らせる電光掲示板が付いている=高島市朽木市場で

写真

 県の西端、安曇川中流の山あいにあり豊かな自然に囲まれた高島市朽木市場の集落。国道367号沿いにある市役所朽木支所の駐車場に、空間放射線量を測る原子力防災用モニタリングポストがある。県内に計六基設置され、四月末に県が運用を始めたうちの一基だ。

 支所の裏手に住む小泉仁康区長(69)は朝五時半に起床し、散歩のついでに支所に立ち寄る。情報の「見える化」の一環でモニタリングポスト前面部には測定数値が常時、電光掲示板に示されている。「今日も平常値だ」。運用開始以来、その測定値情報の確認を、欠かしたことがない。

 日本で唯一稼働中の関西電力大飯原発(福井県おおい町)まで直線距離で約三十キロ。電気料金の値上げや電力逼迫(ひっぱく)の懸念も叫ばれるなか「すぐには原発をやめられないだろう」とは思っている。しかし「冬場には西風が吹く。放射性物質が飛んできたらと思うと怖い」。北西にある同原発や関電高浜原発(同県高浜町)で福島第一原発並みの事故が起きれば被害を受けるかもしれない。小泉さんの「日課」の背景には、こんな危機感がある。

 朽木市場集落には、百五十世帯五百人が住む。六十五歳以上の人口の割合を示す高齢化率は35%。独り暮らしも多い。集落を南北に走る国道367号は、大津市や京都方面につながる唯一の幹線道路。避難経路の選択肢は限られる。屋内退避にはコンクリート建物が避難場所として望ましいとされるが、鉄筋コンクリートの建物は支所くらいしかない。「どう地域の安全を守るのか」

 昨年、政府は大飯原発3、4号機の再稼働を決めた。今年七月には原子力規制委員会が両機が定期検査に入る九月まで運転の継続を決定。新規制基準が施行された八日には、関電を含む四電力会社が十の原発の再稼働を申請した。

 福島事故を受け、国は防災対策の重点地域とした範囲を、従来の原発から十キロ圏内から三十キロ圏内を目安とする緊急防護措置区域(UPZ)に拡大。長浜や高島両市の一部が新たにUPZ圏内に含まれることになり、県や両市などは、ノウハウや対策がほとんどなかった原発防災に向き合うことになった。

 UPZ圏内の人口は約一万八千人。広域避難の方法や放射性ヨウ素による被ばくリスクを抑える安定ヨウ素剤の処方方法は確立されていない。施行された新規制基準も、いわば技術面の基準で、主に原発敷地内の施設を対象にしている。地域の防災対策の充実は盛り込まれていない。

 原発再稼働をめぐり、参院選では自民が公約に「安全が確認された原発は地元自治体の理解が得られるよう最大限努力し、再稼働を推進する」。民主は「規制委の安全確認を得たもののみ再稼働する」とし、共産は再稼働反対を掲げている。

 きょうも、モニタリングポストの確認を続ける小泉さん。「住民の安全と安心の確保が何よりも先。それが筋というもの」と強調する。

    ◇

 参院選は二十一日の投開票に向け、届け出順に自民新人二之湯武史さん(36)、共産新人坪田五久男さん(54)、民主現職徳永久志さん(50)、諸派新人荒川雅司さん(38)の四人が滋賀選挙区に立候補し、それぞれの主張を訴えている。各政党の掲げる争点に即しながら県内各地を歩き、県民が抱える課題を追った。

(梅田歳晴)