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滋賀

岐路 アベノミクスの現場(中) 公共事業

2012年度末の大型補正予算が投入された蒲生スマートICの設置現場=東近江市で

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 ■始動

 青々とした水田が広がる東近江市木村町一帯を、建設重機を積んだトラックが砂ぼこりを立てて行き交う。名神高速道路の八日市インターチェンジ(IC)と竜王ICの中間に位置する「蒲生スマートIC」の建設工事現場だ。

 二〇〇九年度から始まった工事は、安倍政権による公共事業の大幅増で、国の一二年度補正予算が投じられた。一四年度中の開通が確実になり、発注する県の担当者はほっと胸をなで下ろす。

 一二年度補正と一三年度当初予算を合わせた安倍政権の「十五カ月予算」の公共事業費は総額十兆円超。これを受け県が一三年度に組んだ公共事業予算規模は計八百十五億円。このうち景気てこ入れ策として国が付けたのが約百十六億円。業界待望の増額だが、大半は執行を待っている状況で、五月末で契約に至ったのは百十六億円のうち二十九億円にすぎない。

 ■焦り

 県監理課の担当者は「早期発注を心掛けている。順次発注する」と話すが、長引く不況で余力のない県内の建設業界からは「遅い」と不満の声が漏れる。

 県建設業協会の広報担当者は「会員から聞こえるのは、まだまだ景気は良くならない、との声ばかり」とため息。公共事業の効果の手応えは、まだない。協会の辻野宜昭会長は「予算執行が後ろにずれ込むほど年度末までの工期が厳しくなる」と効果の遅れを心配する。

 県とは別に、主要国道を整備する国土交通省滋賀国道事務所の事業費も一三年度当初予算で百二十二億円(前年度比約24%増)が確保された。公共事業は受注する建設会社だけでなくコンクリートなど建設資材や車両など裾野が広く、景気への刺激効果が期待される。

 それなのに業界が盛り上がらないのには理由がある。長い“冬の時代”のあおりで若者らの建設離れが進み、作業員の確保がままならない。東北の復興需要や円安による資材高騰も追い打ちを掛ける。工事の採算が厳しくなり、県内の市発注工事で入札が不調に終わるケースも出始めた。採算割れを恐れる各社が入札に慎重な姿勢をみせる証しだ。

 ■民需に期待

 他県に比べ、県へ配分される公共事業の予算規模が小さいという経緯から、県内業界には公共工事に過度に依存しないというムードが強い。愛荘町で建機レンタルや土木工事などの会社を運営する蔭山孝夫さん(72)は「最近の公共工事はうまみが少ない。やはり民間の需要が増えてこないと本格的に盛り上がってこない」と指摘する。

 県コンクリート製品協同組合(近江八幡市)の田畑愛一郎理事長(69)も「全国的に耐震補強工事が多い最近の公共事業より、他県に比べて一戸建て住宅が多い県内なので、住宅着工が活発になってくれる方がいい」と話す。安倍晋三首相が「三本の矢」と唱えるアベノミクスの基本方針に触れ、「第四の矢を早く放って」と、民間の設備投資減税の実施を求める。

 国交省の建設総合統計によると、県内の一一年の民間建設投資は二千八百四十二億円。〇七年は一・五倍以上の四千五百四十二億円だったが、リーマンショック以降は下がり続けてきた。

 民間の投資が活発になるには、公共事業による刺激に加え、景気全体を底上げする政策が欠かせない。今回の公共事業増が経済成長につながらない、単なるカンフル剤ならば、建設国債による借金ばかりが膨らんでいく。

(井上靖史、花井勝規)