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滋賀

選択の座標軸(下) 田原総一朗さん(ジャーナリスト)

 識者に聞く参院選インタビュー最終回は彦根市出身のジャーナリスト田原総一朗さん(79)。安倍晋三首相の経済政策アベノミクスに欠陥はあっても、野党が対案を示さない限り敵はないと舌鋒(ぜっぽう)鋭く指摘する。

 −世間はアベノミクスに熱狂している。見落とされている重要な争点はないか。

 国民は99%経済だけ見ていると思う。アベノミクスを支持しているのではなく他に選択肢がない。どの党も、どの学者も他の方法で「経済よくするぞ」と言う人がいないから成功してもらわないと困るんだろう。成功するか分からないけどね。

 野党はアベノミクスに代わる対案を出さないといけない。国民は批判になんて関心がない。「自分たちならこうする」という対案を出せば国民も「なら聞いてやる」となる。株価が多少、乱高下しても、批判しかなければアベノミクスに欠陥があっても自民が勝つ。敵がいないんだから。

 −憲法という大切な議論が置き去りでは。

 憲法は争点にならない。たぶんね。仮に参院選で自民党が勝っても安倍さんは憲法改正やらないよ。やっている余裕ないから。アベノミクスに骨抜きが多いから、本気で景気を良くするためには選挙後も全力で経済に取り組まないといけない。経済が良くないと憲法改正だって誰も支持しないんだよ。憲法はおそらく次の総選挙のテーマになる。

 −原発問題もある。

 原発もテーマにならない。原発が危ないことはみんな知ってる。昨年の衆院選では自民党を除く全政党が脱原発と言ったけど、僕がテレビでどうやってゼロにするか聞いたら誰も答えられなかった。脱原発なんて言うのは気楽なもの。マスコミも同じ。僕も含めて。

 −滋賀選挙区では二〇〇四年以降、民主党が三連勝と強い。

 強いも何もない。ファッションに乗っているだけだよ。川端達夫元総務大臣だって(昨年衆院選で)落選するんだもんね。昔から民主の政治家らしい政治家ってやっぱり川端氏でしょ。

 −参院選で自民党が勝てば一気に突っ走る。

 歯止めなんていくらでも掛かる。アベノミクスが失敗したら次は民主党が政権を取るかもしれないし、可能性はいくらでもある。

 −参院選への関心の低さが心配だ。

 参院改革は必要だと思う。参院議員は政党に所属させないとか大臣にしないとか、衆議院とどこが違うか国民にもう少し分かるようにしないといけない。なくす必要はない。米国も英国も二院制だし。

 −あらためて今回の選挙の位置付けは。

 だから野党が位置付けをつくっていない。今は対案を出さない批判は通用しないよ。新聞だって批判しているだけだ。怠けてる。対案を出すためには本当に「経済とは何か」から勉強しないと。

(聞き手・井上靖史、倉形友理)

 <たはら・そういちろう> 1934年彦根市生まれ。彦根東高校、早稲田大文学部を卒業。岩波映画製作所、テレビ東京での勤務を経て、77年にフリーに。テレビ朝日系「朝まで生テレビ」、BS朝日「激論!クロスファイア」などに出演。県内では2005年に始まった人材育成フォーラム「琵琶湖塾」(県立大主催)の塾長を務めている。