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滋賀

選択の座標軸(上) 武村正義さん(元官房長官)

◆政党より人物本位で

 「良識の府」と呼ばれる一方で「衆院のカーボンコピー」と不名誉な別名もある参議院。その議員の半数を改選する参院選が近づいた。衆議院に比べどこか影が薄い参議院が置かれている意義や、選挙では何を拠り所に、どんな問題を軸に投票したらいいのかなどを、県ゆかりの三人の識者に聞いた。初回は、官僚から滋賀県知事を経て衆院議員に転身、細川内閣で首相の右腕となる官房長官を務めるなど、長年国政の中枢にいて政治を見つめてきた武村正義さん(78)=大津市=に語ってもらった。

 −参議院の役割と存在意義をどう考えるか。

 衆議院のチェック役、補完役という性格を持つ。一院制の方がシンプルで分かりやすいが、一つの院で決定するよりは、二つの院で、両方の合意で決まる仕組みは間違いが少ない。時々人間は間違いを犯す。その謙虚さが二院制を作っている。

 −重要な役割を負っているのに、廃止論や改革論がある。

 戦後の参議院がスタートしたころには故山本有三氏のような作家が立候補し、自ら「良識の府」であると言い、衆議院とはひと味違う期待を参院議員も国民も持ったと思う。

 だが、だんだんと崩れていった。参議院の選挙区のうち滋賀を含む三十一の選挙区が一人区。事実上の小選挙区比例代表並立制で、そこには政党がぴたりと寄り添い、衆議院と同じように100%政党選挙になってしまっている。だから「衆議院と同じだ」と不要論が出る。

 −衆議院と参議院の違いをどう出すか。

 党の姿勢と選挙制度が問題だ。特に選挙制度は衆議院と異なる制度を考える必要がある。ブロック区制にするとか全国区制、推薦制を導入するとか、さまざまな提案がある。衆議院と異なる選挙制度をとることで選ばれる代表が違ってくる。

 もう一つは、衆議院は党議拘束されるが、参議院は時と場合によって党議拘束を緩めて選択できるような慣行が出来上がると、政党よりも個人意見が反映されやすくなる。

 −今参院選では安倍晋三首相の高い支持率を背景に自民の強さが伝えられている。

 衆議院の選挙制度自体が実際の投票数よりもオーバーに結果を表す傾向にある。自民は県内の比例得票では二〇〇九年より減らしている。圧倒的に国民が支持しているわけではない。自民も選挙制度の仕組みで大勝したことをよく知っているはずだ。また、有権者は民主が衆院選の惨敗をどこまで心底反省して出直ししようとしているのかも見ている。

 −今回の参院選のポイントや、思いを。

 長年政治活動をやって感じるのは、滋賀県民は時代感覚が鋭いということ。千年の都京都の隣で源平合戦、戦国時代からずっと政権交代を横で眺めてきた。全国平均より、先んじて世の中の動きを見ているのではないか。ドラマチックな結果になることがある。

 参院選では政党選択もあるが、有権者は政党とは違って、人柄にも注目するのではないか。衆議院よりは人物評価のウエートが高いと思う。マスコミも、人物像を多角的に掘り下げて報道してほしい。 (聞き手・梅田歳晴)

 <たけむら・まさよし> 1971年、出身地八日市市(現東近江市)の市長選に当選後、74年の知事選で初当選。40歳の最年少知事(当時)となった。3期を務めた後、86年に自民党から衆院選に出て当選、衆院議員を4期務めた。その間、93年に自民を離党して結成した新党さきがけ代表に就任。日本新党の細川護熙代表を首相とする非自民連立政権で内閣官房長官、社会党(当時)の村山富市委員長を首相とする自社さ内閣で大蔵相を務めた。2000年の衆院選(落選)後、政界を引退。

 <参議院> 都道府県を単位とした選挙区と比例代表で選ばれた議員で構成される。定数は242人で、3年ごとに半数の121人ずつを選び直す。被選挙権は衆議院が25歳以上なのに対し、参議院は30歳以上。参議院は、衆議院の決めたことをチェックしたり、衆議院の足らない点を補ったりすることが求められている。議員の任期は6年で解散はない。じっくりと時間をかけて長期的視野で調査・審議できるのが特色といわれている。