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岐阜

<一人区の戦い>9条改憲(上) 賛成派

父の遺影を手に「戦力を持つと憲法に明記すべきだ」と話す森博史さん=各務原市那加門前町で

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 「もしもの事があったら、頼む」

 各務原市那加門前町の無職森博史さん(82)の耳には、旧日本軍の軍属だった父喜一さんが口にした言葉が今も残る。

 日本が戦線を拡大し、「連戦連勝」と浮かれていた一九四二年、東南アジアに派遣された。アメリカとは戦力差があることを気づいていた父は、自らの身に降りかかる不幸をすでに見抜いていたのだろうか。当時十歳の自分に、母と姉弟四人を託した。

 各務原市の旧日本陸軍飛行場(現航空自衛隊岐阜基地)の技師として、機材の補給や整備を担っていた。派遣されて三年たった四五年五月、フィリピンの山岳地帯で米軍戦車に攻撃され戦死した。四十六歳だった。

 残された一家六人は、飛行場を狙った幾度の空襲をくぐり抜けた。ただ、終戦後は困窮。母はたんすから着物を引っ張り出して米と交換し、家族の糊口(ここう)をしのいだ。

 森さんは大学進学を諦め、飛行場に進駐した米軍キャンプで六年ほど働いて家計を支えた。

 戦時中、戦地の父から届いたはがきの文面が森さんの記憶に残る。つづられていたのは、戦闘機に乗り込む特攻隊員の様子。「おやじ、おふくろ」と叫んだ、と。

 「おやじもみんなも、死にたくないのに身をささげた。祖国と家族を守るために」

 その願いは、六十年以上の歳月を隔てても、今の日本人に同じく当てはまると信じる。だから「国や家族を守る力を持ちませんという現憲法の姿勢は許せないんです」。

 改憲を主張する自民党は、参院選を前に独自の改憲草案を発表した。それによると、九条から「戦力不保持」の関連条文を削除し、「自衛権の発動」をうたい、「国防軍」設置を明記している。

 森さんは、自民の改憲草案を歓迎する。「滅びそうな状況を経験した国だからこそ、守る戦力を持つと憲法にはっきり書くべきだ」。軍隊保持を明記してこそ、祖国や家族を守ろうとする意志が国内外に伝わり、抑止力にもなると思っている。

    ◇

 施行から六十六年を経て、憲法が岐路を迎えている。二十一日投開票の参院選では、「平和憲法」の象徴とされる九条をめぐり、各政党が改憲、護憲の立場から主張する。航空自衛隊の基地を抱え、第二次大戦中は何度も米軍機に襲われた各務原市の戦争体験者も、それぞれの思いを胸に論戦に耳を傾ける。 

(参院選取材班)

<憲法9条2項>

 ■現行の条文

 前項(戦争放棄)の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 ■自民の草案

 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。