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岐阜

<一人区の戦い> どうなる経済(中)「農業」

元気よく伸びる苗に目を細める小林司朗社長=可児市長洞で

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 植えて間もない青々とした苗に、夏の太陽が照りつける。可児市長洞の水田。市内の建設会社「小林工業」の小林司朗社長(61)は、順調な成育ぶりに目を細めた。

 「田んぼをお願いできんかね」。土地所有者から電話があったのは昨年秋。面積〇・二五ヘクタールと狭すぎず、他の田んぼから近かったので耕作を引き受けた。この様子だと、秋には無農薬のおいしい米が収穫できるだろう。「よしよし」と、思わずうなずいた。

 本業は道路工事だが、公共工事の減少で五年前、米作りに新規参入した。口コミで、あれよあれよと受託農地は増え続け、今年は三十八カ所、計七ヘクタールに達した。

 「米作りをやめたがっている農家が多いんだ」。高齢化と後継者不足、それに収入の少なさ。稲作は地域の環境を守っているのに、割に合わない仕事なのか−。小林社長は首をひねる。

 安倍政権が交渉参加を決めた環太平洋経済連携協定(TPP)。十五日からマレーシアで行われる交渉に本格的に加わる。焦点は、域内自由貿易の利益を享受しながら、米など重要五品目の高い輸入関税を維持できるかどうかだ。

 十四年前、米輸入を自由化したとはいえ、今も主食用で778%の関税を掛けている日本。価格競争力は、ほぼないに等しい。「海外米が低価格で輸入されれば、米農家の収入が減り耕作放棄地が続出する」

 小林工業は、無農薬有機栽培や、古代米といった単価の高い米作りで差別化を図る。しかし農業収入は今もわずかだ。生き残れるかどうか、小林社長も見通せないでいる。

 安倍政権の経済政策アベノミクスでは、農家の所得倍増を目標として掲げる。歩を合わせるように、「もうかる農業」を実践し始めたのが大垣市の砂利採取業「揖斐川工業」だ。

 神戸町柳瀬にある同社のビニールハウス。手のひらに乗るほどの小さなポットからトマトのつるが伸び、青々としたこぶし大の実が鈴なりだ。土の乾き具合を自動管理するシステムで、栄養剤を管を通じてポットにまく。「実は土からなるもの」という常識を覆す“トマト工場”でもある。

 「この方法だと、通常の三倍の収入が得られると思う」。井上豊秋社長(65)は強気だ。

 「今までにない農業をやってやろう」と参入した。これまでに培った技術を生かした活躍の場が、まだたくさんあるとみている。「そのためには、いろんな人が入ってきやすい農業にしていかなければだめだ」

 古くからの農家が減って耕作放棄地が増えるなか、TPPが農業衰退への引き金を引くのか。新規参入者が農業にもたらしている活力が、それに対抗するヒントになる可能性がある。 

(大島康介)

◆農業の今後について3候補は 

 アベノミクス「第三の矢」成長戦略やTPP交渉参加で、激変が予想される農業。参院選岐阜選挙区(改選数1)に立候補している主な政党の候補者3人に、思い描く農業の将来像を聞いた。=上から届け出順

 ■吉田里江さん(47)民新

 食料自給率50%を目指して導入した農業戸別所得補償の法制化、木材の安定供給の強化、公共建築物を含めた国産材の利用促進、畜産・酪農所得補償制度、6次産業化などで所得の安定・向上を図り新規就業者を増やします。

 ■大野泰正さん(54)自新

 TPPの議論の際には、日本の農業を守り、国益を守ることに最大限努めるべきだ。農業従事者の高齢化、後継者不足が深刻であり、若者が夢を持って農業に従事できるよう、強い農業をつくっていかなければならない。

 ■鈴木正典さん(49)共新

 農林漁業の本格的再建、食料自給率の50%以上への引き上げを国づくりの柱に位置付け、価格保証と所得補償の拡充や後継者育成支援を柱に家族経営でも大規模経営でも成り立つようにする。TPP交渉参加を止める。