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岐阜

<一人区の戦い> どうなる経済(上)「公共事業」

真夏の作業が行われている道路工事場。公共工事の増加は、国の債務増加にもつながる=北方町高屋で

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 体感温度四〇度を超す炎暑の下、アスファルトを剥がす重機の重い音が鳴り響く。北方町高屋の町道。車道と歩道の段差を解消する工事が進む。

 公共工事の発注は、通年なら秋口からが多い。しかし今年、町が発注したのは三月末。安倍政権が昨年度組んだ大型補正予算の恩恵を受けた。真夏の太陽に照らされて、異例の作業が続く。

 「アベノミクスさまさまだ」。工事を担う杉山建設(本巣市海老)の杉山文康社長(52)はうれしい悲鳴をあげる。

 公共事業は、国と地方の財政難により年々削減され、同社の業績は二〇〇〇年をピークに低迷してきた。過去二、三年の年間売上高は、ピーク時の三〜四割減。百人以上抱えていた従業員も、新規採用を抑えるなどして六十人に半減した。だが、安倍政権の登場で状況は一変した。

 アベノミクス効果は、下請け業者にも及ぶ。道路拡幅工事を請け負う本巣市の土木作業員(53)は「年内は仕事でいっぱいですよ」と、流れる汗を拭きながら話す。息子と二人だけの建設会社の社長でもあり、生活の先行きが見通せる安心感を手に入れたという。

 アベノミクス「第二の矢」の柱は公共事業だ。国は、一二年度補正と一三年度当初の予算で十兆円を投じる。公共事業は地方の景気に影響が大きく、速効性があるといわれるだけに、地方の土木建築業界は沸き立っている。

 本巣市でトップクラスの実績を持つ杉山建設も同様だ。四〜七月の仕事量は例年より五割多く、秋以降はさらに増す見通し。「作業員の確保が大変になりそうだ」。杉山社長は人繰りに悩む。

 公共工事の動向に詳しい東日本建設業保証(東京都中央区)によると、岐阜県内の四〜六月の公共工事件数は千二百六十五件、請負額は七百一億九千万円。いずれも前年同期比で四割増えた。自治体側も対応に追われ、県は年初に、仕事量の増加のため県庁勤務の土木系職員を地方の土木事務所へ派遣した。

 ただ、公共事業に偏った景気対策には負の面も付きまとう。本年度末の国と地方の借金は九百七十七兆円に上る見込みだ。国の予算が国債頼みとなっている現在、公共事業の推進は、財政状況の悪化に拍車を掛ける危険性がある。

 共立総合研究所(大垣市)の江口忍副社長(48)は「国の財政破綻(はたん)のリスクが高まった」と指摘した上で、民間企業の力を最大限に引き出す規制緩和策が必要との考えを示す。

 杉山社長も、特需が長続きするとは思わない。「今後はコンクリート構造物の補修業務が増える。独自に開発した撥水(はっすい)剤を売り込みたい」。将来、財政赤字削減のため公共工事が減ることを見込み、生き残り策を模索する。 (佐久間博康)

◆公共事業の今後について3候補は

 最優先の政策に景気回復を掲げる安倍政権は公共事業に10兆円を投じているが、一方で国と地方の借金は膨らみ続ける。公共事業の今後について、参院選岐阜選挙区(改選数1)に立候補している主な政党の候補者3人に意見を聞いた。=上から届け出順

 ■吉田里江さん(47)民新

 従来の二十世紀型公共事業の延長線ではなく、自然と共生し、スリムでしなやかな国土を形成する災害から国民の生命(いのち)を守る国造りを進め、防災・減災の重要性を踏まえた公共事業の選択と集中を進めます。

 ■大野泰正さん(54)自新

 今後、社会資本が老朽化し、膨大な維持補修費が必要となってくる。優先順位を精査し、投資は怠りなく手を付けていく必要がある。予防的な投資をためらうと、かえって投資が膨らむことになりかねない。

 ■鈴木正典さん(49)共新

 消費税増税を当て込んだバラマキ財政の復活で許せない。公共事業は何よりムダをなくし、住民の生活に密着した学校、保育所、特別養護老人ホームなどの施設改善や耐震化、新増設、生活道路と公共交通網整備を。