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<アベノミクスを問う> 設備投資

年季の入った研削加工機も混在する生産現場。職人の腕で補いながら使っている=名古屋市港区の渡辺精密工業で

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 名古屋市港区の渡辺精密工業。ところどころメッキがはがれ、油汚れが目立つ研削加工機を熟練工が見守る。三十年以上使い続ける年季の入った“相棒”。千分の一ミリ単位の精度が求められる航空機向け部品をじっくりと削りあげていく。

 この機械に代わり、年内にも最新の数値制御(NC)研削加工機を導入する。愛知中小企業家同友会の助言を受け、経済産業省の補助金を利用して一千万円の支援を受けたが、社長の寺西正明さん(48)は「補助金制度が複雑すぎる。説明も膨大で分かりにくい。自分が対象になるとは思わなかった」と顔をしかめる。

 設備投資を促す「呼び水」となるはずの支援策は、国や県、経済団体などが入り乱れて減税、融資、補助金など多岐にわたる。その上、それぞれ条件が細かく定められており、中部経済産業局の担当者でさえ、「一人では全容を把握しきれない」と話すほどだ。

 寺西さんは「施策と企業を結び付ける仕組みが欲しい。そうでなければ需要の掘り起こしにはつながらない」と体験から訴える。

 政府は成長戦略で、設備投資額を今後三年で一割増やし、リーマン・ショック前の年七十兆円規模にする目標を掲げている。支援策を使いやすくするのはもちろんだが、企業の投資意欲は旺盛とは言えない。

 中小企業家同友会全国協議会が、会員企業に実施した景況調査で、今年四〜六月期に設備投資した中小企業は29%と、一〜三月期の32%から低下。協議会が目安とする30%を割り込み、投資目的も「維持補修が中心」という。製造業が投資しない理由は「先行き不透明」が五割を占めた。

 「大企業の海外生産が進む中で、下請けの中小企業は先が見えない。アベノミクスでも仕事量は増えていない。そんな中で新しい設備投資に踏み切れる経営者は少ない」。名古屋市中川区で合板加工を手掛ける宇佐見合板社長の宇佐見孝さん(56)はまくしたてた。後継者不足や円安進行に伴う原材料高といった問題も、先行きを不安にしている。

 経産省が今年実施した調査でも、工作機械を十五年以上使い続けている企業は全体の45%に上る。中小企業の多くは、不況が長引いて買い替えの体力がないのが実情だ。

 設備を作る側である工作機械大手のオークマ(愛知県大口町)社長の花木義麿さん(70)も、現状を「仕事量は増えておらず、経営者も新たな設備投資に慎重になっている」と指摘する。

 それでも受注の前段階の商談は増えつつあるという。アベノミクス効果による企業心理の改善を理由に挙げ、「国内の商談は昨年の最悪期と比べると三、四割は増えている。じわじわと回復に向かっている」と、今後、実際の受注に結び付くことを期待する。

 政府は、投資意欲を刺激するため、設備を廃棄したり、新たに導入したりする企業に対し、経理上の特例で法人税を減らす投資減税策を検討している。

 「投資の追い風になれば」と願う花木さん。さらに、企業の利益にかかる法人税の実効税率自体が日本は約38%で、フランスの33%、英国の24%を上回って世界的に高いことから「国際競争力を高めるため、引き下げが必要だ」と注文をつけた。

(坂田奈央、石井宏樹)