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<アベノミクスを問う> 消費税 住宅

迫る「8%」市場過熱

売り手、反動減に警戒感

 七月上旬の日曜日、名古屋市熱田区の神宮東中日ハウジングセンター。最高気温三五度を超える真夏の日差しにもかかわらず、大勢の家族連れがモデルハウスを見て回る。

 「もう時間がない。消費税はこの先どんどん上がるでしょ。早く決めないと」

 愛知県日進市の団体職員(47)と妻(33)は、賃貸住宅からの住み替えを急ぐ。名古屋市内に土地を確保し、今はハウスメーカーを選んでいる。本当は子どもができてから家を建てようと思っていたが、計画を早めた。

 センターの来場者は四〜六月に前年同期の二割ほど増えている。センター長の奥野祐士さん(36)は「来場アンケートなどを見ると、やはり消費税の影響が大きい。本気で家を探している人が多い」と話す。

 住宅の消費税は物件の引き渡し時に課せられ、予定通り税率が上がると来年四月以降は8%。一戸建て注文住宅は建築に時間がかかるため、経過措置として今年九月末までに契約すれば引き渡しが来年四月以降でも、5%のままになる。

 「五月から七月は週末ごとに、過去にないほどお客さんが来ている。いい物件はすぐに売れ、土地の手当てが追いつかない」と驚くのは、愛知県一宮市の不動産業岩村清司さん(55)。希望する学区などの条件を変えてまで契約を急ぐケースも出ている。

 マンション販売も好調で、来年三月までに完成、引き渡しの新築物件などは完売が相次ぐ。広告会社の新東通信(名古屋市)によると、新規物件の販売開始月の売れ行きを示す初月成約率は、名古屋市内で四月に六年ぶりの90%超となった。

 広告で「消費税5%対象物件」とうたう業者もあり、駆け込み需要を取り込む競争は激しさを増している。

 景気の改善傾向も後押しする。矢作建設工業(名古屋市)によると、最近のマンション購入は富裕層が中心で高額な部屋から売れる傾向がある。担当者は「アベノミクスによる景気見通しの明るさが要因」と分析する。

 さらに、住宅ローン金利に上昇の兆しがあるため、金利が低いうちにローンを組みたいという消費者心理も働いて、住宅市場は熱を帯びる。

 だが、不動産業界が恐れるのは、増税後の反動減だ。

 一九九七年四月に消費税率が3%から5%に上がった際は、顕著に表れた。全国の新設住宅着工件数は、駆け込みのあった九六年度に比べ、増税後の九七年度は17・7%減、九八年度も12・1%減と大幅に減った。

 政府は今回、反動減を抑えようと住宅ローン減税を拡充し、減税の恩恵が十分でない場合の現金給付も打ち出した。それでも、効果が十分かどうかは不透明。大手ハウスメーカーなどが加盟する住宅生産団体連合会(東京)の広報担当者は「反動は必ずある。それがどの程度になるか、今は見えない」と不安を口にする。

(大橋洋一郎)