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<生活部記者の目> 母の一票、侮らないで

子供の笑顔があふれる学童保育。預けている母親たちは、子の幸せを願う=名古屋市内で(記事中の学童保育とは関係ありません)

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 「仕事を取るのか、子供を取るのか」

 働く母親はいつも選択を迫られている。自宅まで電話してきた上司に、まさにこの言葉を投げつけられ、東海地方に住む四十代の女性は「決められません」そして「すみません」を繰り返すばかりだった。

 数日後、洋服だんすの引き出しに小さな封筒を見つけた。「しごとのこと」と小学生の長女の字。母を慰める言葉が並び、最後に「自分のすきなしごとでいいよ」とあった。電話を聞いていたのだ。

 経済的な理由から二年生までで学童保育をやめ、夕方には帰宅する長女のため、平日の営業イベントの仕事は断っていた。

 長女は、平日も仕事していいよと言いたいのだろう。「子供にこんなに気を使わせていたなんて」。涙があふれてきた。

 以前に勤めていた会社は、大学を卒業して正社員で入った。

 営業担当として深夜まで働いた。新しい顧客を次々開拓して波に乗っていたころ、結婚、出産した。一年の育休後に復職したが、同じ仕事は無理で、事務職に変えてもらった。それでも発熱の多い子供のため、月に半分も出社できなかった。申し訳なさから退社。現在の会社は、勤務時間を選べるパート契約で入ったのだが…。

 「仕事のできない人はいらない」。平日の営業イベントを担当させたい上司は、母としての立場を理解しようともせず、迫る。

 「女性の活躍」は安倍政権の成長戦略の中核だという。施策が具体化するのはこれからのようだが、いま、この女性は痛切に願う。

 「母親が当然のように子供を優先できる職場、当たり前の感覚を浸透させてほしい。政治主導でできるはず」

 子供にまで気を使わせるような会社はもう辞める。いまはどの政党を支持する考えもないが、選挙には必ず行く。世の中の母親たちが「一票を握りしめている」ということを示し続けるために。

(文・山本真嗣、写真・佐藤春彦)